英ポンド(GBP)- 1日の変動幅が大きめ!ユーロ離脱後の政治経済に注目

中野貴利人
監修中野貴利人 ネットピコ代表
2019/05/28 更新

英ポンド(GBP)- 1日の変動幅が大きめ!ユーロ離脱後の政治経済に注目

  1. 英ポンド(GBP)の基本データ
  2. イギリスの経済的な特徴
  3. 英ポンドはEU離脱後の政治で動く
  4. 過去にあった特異的な値動き
  5. 2019年1月時点の英ポンドの注意点

英ポンド(GBP)の基本データ

英ポンドの5大特性
  1. GDPの多くを金融業が占める
  2. EU離脱後の政治経済で揺れ動く
  3. 投資マネーで変動幅が大きい
  4. スキャルピングで人気の通貨
  5. 英ポンド売りの傾向は強め
総合 3.0
評価
表記GBP(Great Britain Pound)
為替146.64円(2018年9月14日)
金利0.75%(2019年1月時点)
国名イギリスイギリス
面積244,820km²(2011年・76位)
人口6,318万人(2011年・22位)
GDP2兆6,245億ドル(2017年・5位)
1人あたり39,734ドル(2017年・24位)

イギリスの経済的な特徴

チェック1

金融サービスがGDPの大半

イギリスは2017年時点で名目GDPが世界第5位の経済大国です。GDPの78%を金融などのサービス業が占めており、ロンドンは世界最大の金融センターとして知られています。

製造業の比率が高いドイツやフランス、イタリアとは明らかに異なる産業形態を持つことがイギリス経済の特徴です。自動車や医薬品の輸出も主な産業であり、自動車ではロールスロイス、ベントレー、ジャガーなどが有名です。

貿易の相手国は欧州、米国、中国が主であり、ドイツとフランスに対しては貿易収支が赤字、米国と中国に対しては黒字となっています。

チェック2

国有化で経済が一時悪化

イギリスの1人あたりのGDPは2017年時点で日本とほぼ一緒ですが、過去には日本の半分程度の水準しかありませんでした。最初の原因は第二次世界大戦後に労働党政権が、主な産業が国有化されたことです。

この国有化の理由は、経済学に革命を起こしたケインズの社会主義路線を取るためです。社会保障を充実させ完全雇用を実現するために、主要産業を政府のコントロール下におくことを目指しました。

ところが産業を国有化したことにより、企業間の競争原理が働かなくなります。設備も近代化が遅れて、イギリスの国際競争力が低下していきました。

国際競争力を失うことで貿易収支は赤字となり、その対策として自国通貨の英ポンドを切り下げます。通貨価値は下落して国民所得は低下、その結果、先進国中で最下位になったわけです。

チェック3

民営化で金融大国になった

1970年代に入り、保守党のサッチャーが首相になるとイギリス経済の立て直しのために構造改革に着手します。国有化した企業はすべて民営化し、労働生産性が向上しました。

1986年には金融ビッグバンを契機にイギリスは金融大国として復活しました。その背景にはイギリス経済が衰退中でも、オックスフォード大学やケンブリッジ大学を保持し、高度な情報や知識を有し続けたからです。

さらに1986年、サッチャー政権のもとで証券市場の改革が行われました。証券手数料を自由化し、ロンドンの金融市場を開放したことで、米国や欧州の外資系金融機関が次々とロンドンに集結しました。

その結果、イギリスの金融機関は自由競争のもとに淘汰されてしまいますが、世界中の投資マネーがロンドンシティに集まり、イギリスの金融業は製造業を上回って、GDPを押し上げることにつながりました。

また、EUに加盟していたイギリスが最後までユーロを導入しなかったことで、英ポンドが国際通貨としての地位を高めることにもなりました。

チェック4

政策金利の動きで景気がわかる

景気が良いときは過剰な投資を抑えるために政策金利を上げて、お金を借りにくくします。景気が悪いときは資金需要が鈍るために政策金利を下げて、お金を借りやすくします。

そのため、イギリス銀行が決める政策金利の推移を見ると、イギリス経済に4つの時期があったことがわかります。第1期は1971~1992年の景気拡大期であり、政策金利は7~17%、平均的には10%前後で推移しました。

第2期は1993~2008年で政策金利は5%前後が続きます。ただし、決して日本のような長期不況だったわけではなく、インフレ率も2000年の0.80%を底に上昇に転じ、2005年に2.06%、2008年には3.06%と上がっていました。

第3段階は2009~2017年でリーマンショックが襲った時期です。政策金利は2008年10月に4.5%、11月に3%、12月に2%、2009年1月に1.5%、2月に1%、3月に0.5%と下がり続け、2016年8月に0.25%の最低を付けました。

第4期は2018年以降です。政策金利が2017年11月に0.5%となり、10年4カ月ぶりに引き上げがされました。2018年8月も0.75%に上がり、EU離脱を表明したあとも、景気はそこまで悪化してない状況です。

英ポンドはEU離脱後の政治で動く

英ポンドはEU離脱後の政治で動く

EU離脱後のイギリス経済は弱含み

欧州の政策金利は2019年1月時点で、EUが0%、スイスが-1.25%、ノルウェーが0.75%、スウェーデンが-0.25%と低いです。しかし、イギリスは経済が安定的であり、政策金利は0.75%とユーロ圏で高値を維持しています。

ただし、近年はイギリスのEU離脱をにらんだ神経質な動きが目立ちます。政策金利は上がっていますが、2019年1月時点では2019年に正式決定するEU離脱後を見据えて、英ポンド安を予想した売り注文も集まっています。

兄
EU離脱は悪いことなの?
弟
短期的にはイギリス経済にマイナスだ。

投資マネーでボラティリティは高め

英ポンドは金利が付く通貨としてキャリートレードに利用されています。例えば、英ポンド/円の通貨ペアは流動性も高く、シティの金融市場をバックに取引できることでも知られます。

世界中の投資家はシティに資金を送り、そこでそれぞれの現地通貨を売って英ポンドを買い、必要とするトレードを行うわけです。

このように多くの投機マネーが流入するため、英ポンドのボラティリティ(価格変動)は高くなります。英ポンド/円も1日に2円以上動くこともあり、スキャルピングには向いている通貨です。

過去にあった特異的な値動き


英ポンド/円の年足始値

1

ポンド危機という戦略的な物語

過去最大に英ポンドが動いた年は1992年のポンド危機です。ジョージ・ソロス氏率いるクォンタム・ファンドが空売りを仕掛けて、イングランド銀行が為替介入や利上げで対抗するも、英ポンドが急落しました。

その主な原因はERM(欧州為替相場メカニズム)です。これは今のユーロにつながるECUというバスケット通貨単位を使って、欧州の通貨変動を安定させて、欧州全体の競争力を高めることが目的でした。

ERMでは参加各国の通貨をECUの中心相場に連動させ、変動幅を±2.25%に収まるように利上げや為替介入をするルールです。

ただ、西ドイツの経済が強かったため、事実上は西ドイツマルクの相場変動に歩調を合わせていました。1990年には東西ドイツが統一し、さらにドイツ経済が絶好調な時期になってから、イギリスもERMに参加します。

当時のドイツは好景気によるインフレを抑えるため、政策金利を1991年の6%から1992年9月に8.75%に引き上げるほどでした。

一方でイギリスは英ポンド安に誘導して、輸出産業を主体に経済を立て直そうとしていたため、金融緩和政策による利下げサイクルに入っていました。政策金利は1990年9月の15%から1991年9月に10.5%まで引き下げています。

結果、好景気にわくドイツは金融引き締めのために利上げを続けて、ドイツマルクは通貨高、逆にイギリスは利下げを行ったことで、英ポンドは通貨安になり、双方の通貨は連動しなくなります。

ただ、ERMの「変動幅±2.25%」ルールのために、すでに政策金利が10%、GDP成長率はほぼ0%、通貨安で輸出増に誘導したくても、イギリスは英ポンドが上昇するように利上げしなければいけないジレンマが発生しました。

しかも、対してドイツは政策金利は8.75%、GDP成長率が1.51%、輸出は好調でした。その中で英ポンドが利上げされるなら「英ポンドは過当に高く維持される」とジョージ・ソロスは判断します。

そこでクォンタム・ファンドは英ポンド売り・ドイツマルク買いを進めました。1992年9月15日、英ポンド/ドイツマルクは下落し、ERMの下限値を突破します。そこで翌日イギリス当局は英ポンドを上げる施策を打ちます。

  • 1992年9月16日の午前に政策金利を10%から12%に引き上げました。
  • さらに150億ポンドを投入して英ポンド買いを実行しました。
  • 午後には異例の同日利上げを敢行し、政策金利を15%としました。

しかしながら、それでも英ポンドは下落を続けて、ついにイギリス当局は白旗を上げました。その夜、イギリスのERM離脱を表明したわけです。イングランド銀行の支えを失った英ポンドは大きく下落しました。

クォンタム・ファンドは最終的に10億ドルとも20億ドルともされる利益を得ることになります。1992年9月17日にイギリスは正式にERM離脱を宣言し、政策金利を10%に戻しました。

さらにクォンタム・ファンドはイギリス当局が最終的には利下げに踏み切り、その影響で株は上昇するとにらみ、イギリス株を買っています。逆にドイツとフランスの通貨は上昇するため、両国の株と債券は空売りしていました。

2

リーマンショックで一気に下落

サブプライムローンの貸し出しで好景気にわいたアメリカ経済を背景に、2007年前半までは1英ポンド210円台で推移していました。ただ、2007年秋のサブプライムローン問題により下落、2008年初頭には190円台まで急落しています。

そして、2008年9月のリーマンショックを受けて120円台まで下落、その後は180~190円台に戻しますが、今度はEU離脱発表により2018年9月時点では140円台まで下落して推移しています。

2019年1月時点の英ポンドの注意点

2016年6月に国民投票でEU離脱が決定、2017年1月に英首相がEU離脱を表明しましたが、EUからの合意を得ているわけではありません。そして、表明通りに2019年3月29日に離脱となれば、英ポンドの大幅下落も予想されます。

イギリスのフォックス国際貿易相が「離脱の可能性は6割ある」と発言したことも、英ポンド売りを呼び込んでおり、投機筋のポンド売りポジションも2019年1月の時点では増えているようです。

政策金利を0.75%に上げているにもかかわらず下落基調にあるため、英ポンドは不安定な状態です。もともと投資マネーが集まりやすい特性があって、変動幅が大きな通貨のため、特に中期的な動きがかなり読みにくくなっています。

少なくとも2019年3月29日のEU離脱があるのかどうかを見極めるまで、大きなポジションを取ることは避けたほうがよいかもしれません。

また、EU離脱により下落したとしても、その後の反発も予測されます。そのため、当面はスキャルピングでこまかく利益を積み上げるということが、英ポンド取引の基本戦略になります。

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中野貴利人
監修・執筆・編集
株式会社ネットピコ代表取締役。著書にど素人でも稼げるネット副業の本など。過去の取材はメディア掲載履歴で紹介。