【漫画】ピロリ菌の体験談!胃炎や胃がんの原因は薬で治せる

仕事・家事・育児をする会社員
「胃を攻撃するピロリ菌」




「胃がんの99%に存在」




「検査は2000円程度」




「除菌費用は2万~5万円」




ピロリ菌で胃の病気を発症する
ピロリ菌は胃の中に好んで住みつき、胃の壁を傷つける細菌です。胃の中は強い酸性で「細菌が住めない」と思われていたため、1983年に発見されるまでに長い時間を要しました。
ピロリ菌というかわいらしい名前は、胃の出口を意味する「幽門=ピロルス」から取っています。これはピロリ菌が幽門から初めて見つかったことに由来しています。
ピロリ菌は慢性胃炎や胃潰瘍になる原因の1つというよりも、主な原因です。pピロリ菌によるアンモニア、モノクロラミン、分泌酵素群で胃の粘液が減っていき、胃酸や毒素で胃壁が傷ついたりします。
胃壁が炎症すると、吐き気や胃もたれ、腹痛も起こりやすくなり、慢性胃炎、胃潰瘍、ポリープができて、不快感が続くこと人もいます。さらに胃がんの発症率が20~30倍にもなるという研究結果もありました。
つまり、逆にピロリ菌さえ除菌してしまえば、胃の病気になる確率は大幅に下がるとされています。このピロリ菌が人体に与える影響は次の3点です。
- 慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を誘発します。
- 胃がんになる確率が20倍以上に跳ね上がります。
- 胃MALTリンパ腫といった胃の病気にかかりやすくなります。
現在も研究が進んでおり、例えば「ストレスで胃が痛くなりやすくなる、胃ポリープもピロリ菌が原因である、大腸がんを併発しやすくなる」といった新たな発見が次々とニュースになっています。
また、ピロリ菌感染症の検査は尿素呼気試験法などが必要でしたが、現在は血液検査のみで簡単に調べられます。健康診断や人間ドックのオプションでは約2000円程度です。
胃炎や胃がんのリスクが増える
ピロリ菌は酸性で満たされた胃の環境においても増殖できる細菌で、胃粘液に生息しています。その結果、胃の粘膜や粘液が減りやすくなり、胃酸が直接胃壁に触れることでダメージが蓄積されます。
ピロリ菌も毒素を排出しており、胃潰瘍や胃がんの発生に強く関与していることがわかっています。ピロリ菌が感染して起こりやすい病気は次の通りであり、逆にピロリ菌を除菌すると病気の発症率は低下しやすいです。
病名 | 症状 |
---|---|
慢性胃炎 | 長期的に胃粘液が炎症を起こしている状態です。加齢によって胃粘液が減ってくると、発症率が高まります。主な原因はピロリ菌の感染であり、感染期間が長いほど胃がんに進展しやすいです。 |
胃潰瘍 | 胃粘膜が薄くなり、胃酸で胃粘膜が損傷した状態です。悪化すると胃壁までが傷付きます。主な原因はピロリ菌、喫煙、ストレスであり、同様に十二指腸にも潰瘍が発生することがあります。 |
胃ポリープ | 胃にできた良性の腫瘍です。胃ポリープの一種である細胞分裂が過剰になってできた過形成性ポリープは、主にピロリ菌の感染が関与しており、まれにがん化することがあります。 |
胃がん | 日本では年間10万人以上が胃がんにかかっており、がん患者ではワースト1位の病気です。ただし、ピロリ菌の除菌が推奨されるようになってからは、胃がんの死亡率が改善してきています。 |
胃マルトリンパ腫 | リンパ系の組織からできたがんである悪性リンパ腫の一種です。原因の1つにピロリ菌感染症があります。病気の進行はゆっくりですが、体のあらゆる臓器で発症する可能性があります。 |
特発性血小板減少性紫斑病 | 血小板という出血を止める成分が減って、出血しやすくなる病気です。血小板を抑制する抗体が異常に増殖することやピロリ菌感染症が原因とされています。 |
機能性ディスペプシア | 胃痛や胃もたれといった自覚症状がありながら、胃カメラでは異常が確認できない病気です。日本人の25%が経験するほど病気であり、過度のストレスや胃酸過多などが原因であれば、自然に治りやすいです。ピロリ菌が原因になると、除菌が推奨されます。 |
ピロリ菌に感染すると、日常的には吐き気、起床時や緊張時の吐き気、空腹時の吐き気や腹痛、食欲不振、食後の腹痛などが起こりやすくなります。ただし、ピロリ菌に感染しても自覚症状がまったくない人のほうが多いです
日本人の50%が感染者である理由
中高年は保菌率がかなり高い
世界中でこの菌の保持者が発見されており、特に発展途上国では感染率が高く、先進国では感染率が低い傾向があります。
これはピロリ菌が食べ物や飲み物から感染しやすいためであり、上下水道の普及率の低かったり、衛生状態の悪いところでは菌が繁殖しやすく、感染する人も多いです。
同じ国の人でも経済状態の悪い地方ですと、ピロリ菌に感染しやすくなりますし、50歳以上で戦後の衛生状態が悪い時代に生まれ育った人も高い感染率を示しています。日本人の50%以上がピロリ菌に感染しており、中でも50代以降では保持者の割合が70%以上に達します。
このように感染率の高いピロリ菌ですが、必ず胃潰瘍や十二指腸潰瘍するわけではなく、感染した人の5%が病気を発症するに留まります。
しかしながら、ピロリ菌の感染が蔓青園、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になることは確実で、胃がんの発生にも深くか関連しています。実に胃がん患者の80%以上が感染者であるとの報告もされています。
特に慢性胃炎のため、胃痛、胃もたれ、不快感などの症状が続く人、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断された人は、治療や再発を予防するために「ピロリ菌の除菌が望ましい」です。
つまり、ピロリ菌に感染しても100%胃の病気を発症するわけではありませんが、胃の病気を発症した人はピロリ菌に感染している確率が高いです。
胃の中では生命力が相当強いピロリ菌
胃の中はpH1~2と高い酸性で、とても生物が生きていけるような環境ではありません。実際、ピロリ菌もpH1~2では死滅します。
ただし、ピロリ菌は胃酸を直接触れないように、自らが住みやすい環境を作りだしているからこそ生息できています。
ピロリ菌はらせん状をしており、数本のべん毛を持っていて活発に動き回っています。胃の粘膜に好んで住みつき、粘液の下にもぐりこんで多くの胃酸から逃れているわけです。
さらにピロリ菌は胃酸に耐えて抜くためにウレアーゼと呼ばれる酵素を吐き出します。この酵素は胃粘液の成分である尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。
この分解された強アルカリ性のアンモニアで自分の周りを覆って、強酸性の胃酸と中和させることをしています。その一方でピロリ菌が発生させるウレアーゼを含めた毒素こそが、私たちの胃粘膜に障害をもたらすわけです。
血液検査や内視鏡検査で判定できる
ピロリ菌の検査は7種類があります。健康診断ではIgG抗体検査という血液検査が一般的であり、オプション料金は約3000円です。胃カメラを飲むタイプでは内視鏡の費用に加えて、2000~1万2000円がかかります。
名称 | 説明 |
---|---|
血液検査(IgG抗体検査) | ピロリ菌が胃に存在すると、ピロリ菌を排除するために体内で抗体が作られます。血液検査ではこの抗体の量を調べます。費用は採血と検査判断料などで2000円、抗体1個あたり800~1000円です。 |
尿中抗体測定 | ピロリ菌の抗体は尿にも含まれるため、尿検査や唾液検査でも診断できます。尿検査の費用も血液検査と同じく3000円程度です。 |
便中抗原測定 | 便を採取して、ピロリ菌の抗原の有無を直接調べます。抗原とは抗体を作らせる原因となる毒素や成分の総称です。便中抗原測定の費用は3000円程度です。 |
尿素呼気試験法 | ピロリ菌が分泌するウレアーゼという酵素は、胃粘膜に含まれる尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。そのため、呼気に含まれる二酸化炭素の量を測定すると、ピロリ菌の有無がわかります。費用は6000円程度です。 |
迅速ウレアーゼ試験 | 内視鏡で胃粘膜を採取して、特殊な黄色い液体に浸すと、ピロリ菌がいたときにピンク色になります。これはピロリ菌が分泌するウレアーゼという酵素が反応するためです。胃カメラの費用に加えて、2000~3000円が必要です。 |
培養法 | 内視鏡で採取した胃粘膜を培養して、ピロリ菌の増え方を調べます。ピロリ菌の増殖には5~7日がかかるために、他のピロリ菌の検査よりも結果は遅いです。検査費用は内視鏡の約5000円と培養法の約3000円になります。 |
組織鏡検法 | 内視鏡で胃組織を採取して、それを目視しやすくするために染色してから、顕微鏡でピロリ菌を見つける方法です。専門性の高い作業が必要であるため、費用は1万2000円程度になります。 |
情報取得日 2020年1月時点
治療薬で90%以上の人が除菌できる
ピロリ菌治療で先行している欧米では、胃酸を強力に抑える薬と2種類の抗生物質を使った除菌療法に対して、健康保険が適用されます。
日本でも2000年にピロリ菌の除菌療法に健康保険が認められるようになりました。ただし、除菌のみの処置は健康保険の適用外であり、すでに特定の胃の病気を発症していないと健康保険が利きません。
現在、健康保険が適用される胃疾患は、2000年に認められた胃潰瘍と十二指腸潰瘍、2010年に追加された胃MALTリンパ腫と特異性血小板減少性紫斑病、2013年に適用された慢性胃炎のみです。
ただ、ピロリ菌がいると胃の病気にかかりやすいことは確定的ですので、健康保険が利かなくても除菌療法をする人は増えていますし、今後も研究が進めば、健康保険の対象となる病気は増えていく予定です。
ちなみに日本の除菌療法では胃酸分泌抑制薬と抗生物質を服用することになります。例えば、胃酸分泌抑制薬にはランソプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤(PPI)、抗生物質にはアモキシシリンとクラリスロマイシンの2種類を組み合わせます。
これらがセットになった武田薬品工業の「ランサップ」やエーザイの「ラベキュアパック」などが、ピロリ菌の除菌では処方箋として広まっています。
ただ、特定の薬に耐性を持ったピロリ菌も増えており、仮にランサップが効かなかった場合は抗生物質をメトロニダゾールなどに置き換えたりして、複数の組み合わせを実施することで除菌率を上げていきます。
2015年には胃酸分泌抑制の新薬であるボノプラザンが発売されました。従来のプロトンポンプ阻害剤の除菌率は約70%でしたが、ボノプラザンは胃酸分泌を強力に抑えて抗生物質の効果を上げるため、除菌率は90%に達します。
また、抗生物質を投与したことによる下痢、味覚異常、肝機能異常といった副作用に抵抗を覚える人もいます。
そのため、特定保健用食品にも認定されている明治乳業の乳酸菌LG21入りヨーグルトなどの併用も高い支持を得ていますし、実際に食べ続けることでピロリ菌の増幅を抑える効果が確認されています。
定住したピロリ菌は自然治癒することが難しい細菌であるため、こういった効果が期待できる食品で積極的に除菌することも正しい選択の1つです。