自己都合を会社都合に変更にできる人とは?労働環境の悪化などで認められる

自己都合と会社都合の違い
退職する理由は「自分の都合で辞めた自己都合」と「会社の都合で辞めた会社都合」に分かれます。会社都合のほうが給付日数が延びるため、失業保険の最大支給額が1.0~2.2倍も増える計算です。
さらに2カ月の給付制限が解除されたり、国民健康保険税が最長2年間軽減されるなど、大きなアドバンテージがあります。そのため、自己都合と会社都合の違いを理解して、なるべく会社都合で申請しましょう。
項目 | 自己都合 | 会社都合 |
---|---|---|
退職理由 | 転職や転居など | 倒産や解雇など |
受給資格 | 一般受給資格者 | 特定受給資格者 |
加入期間 | 過去2年間で12カ月以上 | 過去1年間に6カ月以上 |
給付制限 | あり | なし |
最短支給開始日 | 116日後 | 32日後 |
給付日数 | 90~150日 | 90~330日 |
最大支給額 | 約124万円 | 約272万円 |
退職金 | 減額対象 | 増額対象 |
国民健康保険税 | 通常納付 | 最長2年間軽減 |
情報取得日 2020年1月時点
ハローワークで会社都合に変更する
ハローワークに提出する雇用保険被保険者離職票(2)には、離職理由が記載されています。①の「離職区分」は離職理由によって、1A~5Eのいずれかに丸が付けられてます。
②の「具体的事情記載欄」は事業主と離職者の双方が記入できるようになっており、ここに事業主が「自己都合による退職」、離職者が「同上」と記入することで、自己都合による退職であることがわかります。
しかし、本当は会社都合に該当するにも関わらず、勤めていた会社が会社都合と認めなかったり、自分を「自己都合」と思い込んでいる人もいます。会社を辞めたあとに「会社都合」と気付く人も跡を絶ちません。
例えば、倒産が会社都合であることはわかりやすいですが、事業所の移転したことで通勤に片道2時間もかかったり、パワハラやセクハラが嫌気が差して自主退職した人も、その原因が会社にあるなら会社都合です。
そのことをハローワークの職員に相談して、裏付けが取れると自己都合を会社都合に修正してくれます。一方で本来、自己都合で辞めた人はそのまま自己都合で申請しましょう。
自己都合を無理に会社都合に変えることは、前の会社に迷惑がかかります。これは会社都合で辞めた人がいると、会社は助成金が貰えなくなったり、会社のブランド力が毀損する恐れがあるからです。
会社都合になる退職理由一覧
自己都合を会社都合に変えたい人は、会社都合に値する理由を把握しましょう。賃金低下や長時間労働など、全17パターンがあります。また、会社都合に当てはまるかがわからない人は、ハローワークの職員にも相談できます。
- 倒産手続きの開始や手形取引の停止が発生した
- 1カ月に30人以上や1/3以上が離職した
- 事業所廃止
- 事業所移転後の通勤に往復4時間以上かかる
- 解雇
- 給与、労働時間、勤務地、仕事内容などの労働条件が異なる
- 賃金の1/3を超える額が2カ月以上払われない
- 賃金が85%以下に落ちた
- 3カ月連続して月45時間を超える時間外労働が行われた
- 採用時とは別の職種に就いて賃金が低下した
- 契約社員で3年以上働いても更新されなかった
- 契約社員で何度も更新した上で契約終了となった
- パワハラやセクハラなどが原因で退職した
- 事業主から退職を勧められた
- 3カ月以上連続して事業活動を休業した
- 事業所が法令違反をした
- 心身障害や父母の看護で退職せざるを得なかった
会社都合を証明する書類一覧
ハローワークの職員に「会社都合」であることを述べるだけでは、自己都合が会社都合には変わりません。区分別に会社都合を証明するための書類が決められており、これを持参することになります。
区分 | 離職理由 | 書類 |
---|---|---|
1A | 解雇(1Bと5E以外) 倒産手続き 手形取引停止 |
|
1B | 事業所廃止 事業再開なし |
|
2A | 雇用3年以上で雇い止め |
|
2B | 雇用3年未満で雇い止め |
|
2C | 雇用3年未満で契約満了 |
|
2D | 契約満了(2A~2C以外) | - |
2E | 定年 移籍出向 | - |
3A | 退職勧告 |
|
3B | 事業所移転 |
|
3C | 正当な理由のある自己都合退職(3A、3B、3D以外) |
|
3D | 正当な理由のある自己都合退職(雇用6~12カ月未満) |
|
4D | 正当な理由のない自己都合退職 | - |
5E | 本人に責任がある解雇 | - |
情報取得日 2020年1月時点
給与、労働時間、勤務地、仕事内容などの労働条件が採用時とは異なる場合の離職は、上記では3Cに該当します。労働契約書、就業規則、タイムカード、賃金台帳、給与明細書などを持参します。
上司や同僚からのパワハラやセクハラによる離職も、上記では3Cに該当します。そのときは辞令、労働契約書、就業規則、賃金台帳などを持参します。
また、住まいを管轄するハローワークや離職理由によっては持ち物が変わる場合があります。ちなみに2D、2E、4D、5Eは自己都合退職に該当するため、持ち物はありません。
会社都合にした体験談や口コミ


勤務歴3年
技術職で採用されたにも関わらず、結局は営業職に配属されました。今後も技術職に異動する見込みがない場合は、雇用する際の契約の不一致にあたり、会社都合で退職せざるを得ないと判断できます。
同僚も似た境遇であり、就職時に「勤務地は都内」という説明を受けながら、地方に飛ばされました。採用時と現在の労働条件が違うために自己責任はなく、自ら辞めるとしても会社都合で申請できます。
ただ、会社都合に値する状態で辞表を出しても、企業は自己都合で扱いました。雇用保険被保険者離職票(2)にも「自己都合による退職」記入されています。
この状態でハローワークに行っても、証拠がないために職員もスピーディーに動いてはくれません。そこで自ら「採用時の募集要項」などの資料を提出することで、スムーズに会社都合に変えることができました。


勤務歴4年
私は毎月80時間は残業していましたが、意図的にタイムカードが操作されて、残業時間は20時間以下に減らされていました。そのため、まずは残業時間の違いを訴えたときの会話を録音しました。
さらにタイムカードのコピーを用意したり、残業中のパソコンの操作時間をデータで保存するなど、一通りの証拠を揃えたことで、ハローワークの職員が企業に事実確認を取りました。
そこで労働環境が著しく劣化していると判断されたため、労働監査局からの監査も入ります。立つ鳥跡を濁さずにしたくても、会社には過失があって「損をした」と感じるなら、自分のことを優先したいです。
ただし、友人のケースでは自己都合を会社都合にするデメリットを知りました。彼は確たる証拠を集めなかったために、勤め先だった企業の顧問弁護士が事実を否定して、時間のみが過ぎたということでした。