特定受給資格者の判別の仕方!倒産と解雇以外に賃金未払いや嫌がらせも対象になる
会社都合である特定受給資格者のメリット
退職理由には「自分の都合で退職した自己都合」と「会社の都合で退職した会社都合」があり、雇用保険では自己都合の人は一般受給資格者、会社都合の人は特定受給資格者に分類されます。
しかし、現状では会社都合に該当するにも関わらず、自ら「会社を辞めたくなって辞めた」という意思が先行して、自己都合で申請する人がいます。自ら辞めたとしても、それが会社の環境のせいであれば会社都合です。
例えば、会社倒産や強制解雇、3カ月連続の時間外労働、いじめや嫌がらせはすべて会社都合であり、ハローワークでは「会社都合=特定受給資格者」で申請できます。
他にも「今の仕事内容が就職活動時に受けた説明と異なる」や「上司にパワハラを受けて会社に相談しても対応してもらえなかった」といったケースでも、会社都合になりえます。
仮に会社都合で特定受給資格者になった場合、失業保険の給付期間が一般受給資格者より長くなります。そのため、次の会社都合になる理由を把握して、失業保険の給付金で損をしないようにしましょう。
また、失業保険の受給資格も、一般受給資格者は離職日以前の2年間に被保険者であった期間が12カ月以上必要ですが、特定受給資格者は離職日以前の1年間に被保険者であった期間が6カ月以上に短縮されます。
特定受給資格者の判別① 倒産編
倒産
勤務先企業が倒産して、離職した人です。倒産とは破産、民事再生、会社更生、会社整理、特別清算の開始を裁判所に申し出をする、もしくは不渡手形の発生することが該当します。
この場合は会社が離職票を発行しなくても、裁判所による倒産手続きの受理表や債権者への案内などをハローワークに持参することで特定受給資格者と認められます。
また、1カ月以上の業務停止命令で、事業所の倒産が確実な場合も倒産と見なされます。この場合は業務停止命令がわかる資料などを持参します。
大量離職
事業所を管轄する公共職業安定所に、1カ月に30人以上の離職が予定される届け出が提出された場合、人員整理が確実であるために特定受給資格者になります。もしくは事業縮小で雇用保険被保険者の1/3が離職した場合も同様です。
事業所廃止
事業所が廃止、もしくは再開の見込みがない事業活動の停止がされた場合は、雇用保険適用事業所廃止届を持参することで会社都合による離職とみなされます。また、解散の議決が行われた時点でも、その議事録などがあれば特定受給資格者と認められます。
事業所移転
事業所の移転で勤務地が変わって、通勤に往復4時間以上かかるとき、移転から3カ月以内に離職すると特定受給資格者です。この場合は事業所の移転通知書、事業所の移転先住所や通勤経路がわかる資料などを持参します。
特定受給資格者の判別② 解雇編
解雇
自己責任ではないにもかかわらず、会社側から一方的に解雇を宣告されて、離職を余儀なくされた人です。この場合は解雇予告通知書、退職証明書、就業規則などを持参することで認められます。
労働条件
採用時に示された労働条件と実際の労働条件が著しく異なるために、1年以内に不満を持って辞めた人です。労働条件には給与、労働時間、勤務地、仕事内容などが含まれます。
この場合は採用時の労働条件がわかる労働契約書と就業規則、労働内容が変更された事実がわかる労使協定や労働組合の資料などを持参します。それらがない場合はハローワークにて職員に伝えることも有効です。
賃金未払い
賃金の1/3を超える額が、2カ月以上継続して支払われなかった人です。この場合は労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金台帳、給与明細書、預金通帳などを持参します。
賃金低下
賃金が85%以下に落ちた人です。ただし、1年以上前から賃金低下が予想できるときや出来高制は除外されます。この場合は労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金低下がわかる資料などを持参します。
時間外労働
3カ月連続して月45時間を超える時間外労働が行われたときも、会社都合と見なされます。サービス残業も同様であり、この場合はタイムカード、賃金台帳、給与明細書などを持参します。
もしくは行政機関に生命や身体に重大な影響を及ぼすと指摘されても、事業所が対策を講じなかったために離職した人も対象です。
また、事業所が労働基準法や労働安全衛生法などに違反していて、行政機関より指摘を受けたにもかかわらず、1カ月経過してもその環境が改善されなかったときも特定受給資格者に該当します。
職種転換
採用時に示された職種とは別の職種に就くことになり、それが原因で賃金が低下した場合、職種転換の通知から1年以内、もしくは職種転換後3カ月以内なら、特定受給資格者に該当します。この場合は労働契約書、辞令、賃金台帳などを持参します。
また、10年以上同じ職種に就いていた人が、教育訓練なしの職種転換によって、新しい職種に適応することが困難となって離職したり、本人の介護が必要とする親族がいながら転勤を命じられた場合も特定受給資格者になります。
有期雇用契約①
有期雇用契約の人で3年以上雇用されていたにもかかわらず、契約が更新されなかったときは、特定受給資格者に該当します。この場合は労働契約書、雇入通知書、契約更新通知書、就業規則、タイムカードなどを持参します。
有期雇用契約②
有期雇用契約の人で過去に何度も契約を継続してきたにもかかわらず、いきなり契約終了に追い込まれて職を失った人です。この場合は労働契約書、雇入通知書、契約更新通知書、労働協約、就業規則などを持参します。
人間関係
上司や同僚から故意にいじめ、追い出し、冷遇、嫌がらせ、セクハラなどを受けた人は、会社のせいで退職に追い込まれたと見なされます。この場合は辞令、労働契約書、就業規則、賃金台帳などを持参します。
退職勧告
事業主から退職を勧められ、意思に沿わない形で退職届を提出した人が対象です。もしくは希望退職で離職した人も該当します。この場合は希望退職募集要項などを持参します。
休業
3カ月以上連続して事業活動を休業しているときに辞めたときは、特定受給資格者になります。この場合は賃金台帳や給与明細書などを持参します。
法令違反
事業所が法令違反の商品を製造したり、販売した場合、法令違反の事実を知ってから3カ月以内に離職した人は特定受給資格者と認定されます。この場合は事業所が法令違反をしたことがわかる資料を持参します。
また、会社の事業内容が不透明であり、業務に直接携わる本人がその内容を知る権利が得られないときは、離職しても会社都合になります。
特定受給資格者の体験談や口コミ
旅行代理店
私は残業が1カ月に50時間以上もあり、ほとんどがサービス残業でした。残業時間を抑えようと家に持ち帰って仕事を片付けたこともあります。その結果、労働時間は月200時間を軽く超えていました。
それでいて給料は手取りで20万円以下です。このような労働環境では体を壊しますし、自分の希望とはまったく合わないため、会社を退職することを決めました。
しかし、会社は本人の意思で辞めたために、離職票に「自己都合」と記載しました。私が会社都合を主張しても、会社は「残業はあったが、会社都合には該当しない」と反論してきます。
ただ、業務説明や雇用契約時にこのような就労実態は説明されていませんし、そもそもサービス残業は労働基準法に違反します。
そのため、私は反発姿勢を見せました。失業保険の申請時にハローワークの職員に相談すると、まずは会社に電話で事実関係を確認し、翌週にはその会社を訪問して、労働環境の調査してくれました。
結局、過酷な勤務実態が勤怠記録と同僚の証言で証明され、会社都合として受理されます。少しでも自分の退職理由が「会社都合」と思ったら、ハローワークの職員に退職理由をありのままに話すようにしましょう。
自分の正当性を主張すれば、特定受給資格者として失業保険の給付を受けることは難しくありません。さらに今後は労働審判によって、未払い分の残業代を請求する予定です。