金価格は1gあたり最安値962円&最高値1万2959円!予測は2026年に2万円になる
1871年~2021年の金価格の推移
1871年に「1g=67銭」だった国内金価格は、世界の経済発展とともに上昇していきました。まだ世間的な投資対象ではなかった純金でしたが、1980年1月に歴代2位の「1g=6495円」を付けています。
その後は投資マネーが株などに集中してしまい、金価格は緩やかに下落し続けて、1999年9月に「1g=962円」の底を打ちます。
ただし、そこから反転し、国内金価格は長期で上昇トレンドに移っています。1gあたりの国内金価格を5年単位で比較すると、2000年は1064円、2005年は1544円、2010年は3471円、2015年5003円、2020年は6013円でした。
そして、2020年4月13日に「1g=6513円」となり、40年ぶりに歴代最高値を更新。2020年6月26日には「1g=6715円」、2020年8月7日には「1g=7769円」となって、歴代最高値を塗り替えています。
専門家の間でも「この上昇トレンドは波を打ちながらも、向こう十数年は続く」とされており、一時的に下がっても国内金価格は「1g=4500円」を切ることはないでしょう。
年 | 円/g(税込) | 説明 |
---|---|---|
1533年 | - | 大量の純金を保有していたインカ帝国が滅亡し、数十億円分の純金がヨーロッパに流入する。 |
1813年 | - | イギリスで通貨の価値を純金で保障する金本位制が確立し、信用力のある貨幣が流通する。 |
1848年 | - | 米国のカリフォルニアで金鉱が発見されて、ゴールドラッシュとなる。 |
1871年 | 67銭 | 日本でも金本位制が採用されて、明治政府が純金を「1.5g=1円」とする。 |
1914年 | 1円34銭 | 世界中に金本位制が広がったが、第1次世界大戦によって各国が廃止とする。 |
1919年 | 1円36銭 | 米国が金本位制を復活させて、各国も再び金本位制を採用し始める。 |
1929年 | 1円39銭 | 世界大恐慌によって金本位制が機能しなくなる。ほとんどの国が金本位制を放棄し、米国も1933年3月に金本位制を放棄する。 |
1944年 | 4円80銭 | 米国は米ドルを基軸通貨にするために「1oz=35ドル」と定める。さらに各国の通貨と交換比率を定めたブレトンウッズ体制が採用されて、固定相場制となる。 |
1971年 | 24円91銭 | 米ドルの発行額が金地金の量を上回ったため、1971年8月に「1oz=775円」の比率による交換をやめる。 |
1973年 | 690円 | 為替レートが2月に固定相場制から変動相場制に変更したため、金価格も変動相場制となり、金本位制が終了する。 |
1980年 | 4499円 | 1月に史上最高値である「1g=6495円」を付けたあと、5月に年間最安値の3645円となる。4カ月で3000円以上の下落幅を記録する。 |
1983年 | 3296円 | OPECが石油価格を大幅値下げし、この年から金価格の下降トレンドが始まる。最高値3975円から最安値2895円まで変動する。 |
1989年 | 1776円 | 1985年のプラザ合意、1987年のブラックマンデーを乗り越え、日経平均株価が3万8957円となり、純金へ流れる投資マネーが激減する。 |
1991年 | 1657円 | バブル崩壊後も金価格は一貫して下がり続ける。 |
1997年 | 1403円 | 7月にアジア通貨危機、11月に山一證券と北海道拓殖銀行銀行の破綻するなど不況が続くも、金価格は下がる。 |
1999年 | 1122円 | 米国が好景気のために資金が米ドルに流れて、1999年9月に「1g=962円」という変動相場制以降の最安値で大底を迎える。 |
2000年 | 1064円 | 世界がミレニアムを迎えた節目の2000年。株や為替が盛り上がりを見せて、資金が純金から離れたため、年間平均では最安値を付ける。 |
2001年 | 1160円 | ITバブル崩壊と米国景気後退で、世界経済は悪化する。9月に米国同時多発テロが発生し、安全資産である純金に資金が流れ始める。 |
2002年 | 1360円 | 米国経済が回復し始める。 |
2003年 | 1399円 | 下落基調が続いていた金価格は、アメリカのイラク攻撃などによる有事の影響で上昇トレンドへと移り変わる。 |
2004年 | 1559円 | 国内は景気回復が続く。 |
2005年 | 1544円 | 国内は景気回復が続いたため、純金から株や為替に資金が流れる。 |
2006年 | 2131円 | 北朝鮮によるミサイル発射やイスラエル軍のレバノン侵攻といった度重なる有事で、安定力のある純金に資金が集まる。 |
2007年 | 2552円 | 同年9月にサブプライムローン問題が発覚して、株高がストップ。資金は高利回りの投資商品から純金に流れて、金価格が上昇していく。 |
2008年 | 3226円 | 2000年から8年で4倍以上に迫る。ただ、9月のリーマンショックの影響で現金確保が急務となり、純金が売却されて金価格が一時的に下がる。 |
2009年 | 2728円 | 世界同時不況の最悪期から脱しても2番底が懸念され、株価、為替、石油に不安定さが抜けない。そのため、純金に投機マネーが集中し始める。 |
2010年 | 3471円 | 中国やインドの金需要が高まると同時に、米ドルやユーロの通貨不振、株取引などの低迷から、安全資産である純金への買いが集中する。 |
2011年 | 3931円 | リーマンショックによる世界同時不況から3年、各国の景況感に差が出る。欧州は危機的状況でそのことから金価格も堅調に推移する。 |
2012年 | 4179円 | 欧州は不透明感が続くが、年末には米国を中心に緩やかな景気回復にシフト。高騰した金価格も落ち着きを見せる。 |
2013年 | 4962円 | 世界的には株や為替に資金が流れたために、海外金価格は下落トレンドとなる。一方、国内金価格は円安の影響で大幅に上昇する。 |
2014年 | 4396円 | 中国や新興国経済の好調でマネーは株に集中するが、急激な円安のために国内金価格は年度末に5000円を突破する。 |
2015年 | 5003円 | 米国経済が好調で純金より株が人気、中国は景気減速で純金を買い控える。海外金価格は下落し続けて、国内金価格も影響を受ける。 |
2016年 | 4494円 | 海外金価格は堅調に推移するも、為替が「1ドル=120円」から110円などの円高になり、相対的に国内金価格が下がっていく。 |
2017年 | 4779円 | 景気は緩やかな回復傾向。金余りもあって金価格も上昇する。 |
2018年 | 5171円 | 引き続き、景気は緩やかな回復傾向。ただし、世界経済は不確定要素が強まって、資金が純金に流れる。 |
2019年 | 4880円 | 株価が高止まりするも資金は戻らず、円高によって国内金価格は少し値を下げる。 |
2020年 | 6013円 | 米国と中国の貿易戦争で純金を買い求める動きが強まる。さらに新型コロナウイルスの感染拡大で「1g=7769円」となり、40年ぶりに歴代最高値を更新する。 |
2021年 | 6904円 | 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず「1g=7000円」前後を維持する。また自動車需要の減少と電気自動車へのシフトでプラチナ需要が減り、純金よりプラチナ価格のほうが下回る。 |
ドル建てと円建ての金価格の推移
購入する純金を米ドルで買う場合はドル建て金価格、日本円で買うときは円建て金価格を見ます。ドル建て金価格は「1トロイオンス=31.1035g」あたりであり、1gあたりではないことには注意しましょう。
ドル建てがある理由は、2国間で取引されるときに「通貨の単位」と「重さの単位」をどれか1つに決める必要があるからです。その際はニューヨーク金先物相場で使用されているドル建て金価格が適用されます。
ただし、日本国内に入ってきた純金を日本国内で売買するときは「1g=6000円」のような単位のほうがわかりやすいため、円建てで取引します。そのため普段、金の延べ棒や純金積立で売買するときは円建て金価格です。
年 | ドル/oz | 円/g(税込) | 為替レート |
---|---|---|---|
2000 | 279.16 | 1065 | 108.83 |
2001 | 271.05 | 1160 | 122.54 |
2002 | 309.88 | 1361 | 126.15 |
2003 | 363.58 | 1469 | 117 |
2004 | 409.35 | 1546 | 109.22 |
2005 | 444.72 | 1700 | 111.26 |
2006 | 604.06 | 2401 | 117.39 |
2007 | 695.91 | 2792 | 118.86 |
2008 | 872.17 | 3084 | 104.57 |
2009 | 973.01 | 3099 | 94.65 |
2010 | 1225.60 | 3651 | 88.79 |
2011 | 1572.34 | 4263 | 80.79 |
2012 | 1668.86 | 4537 | 80.81 |
2013 | 1411.77 | 4676 | 98.7 |
2014 | 1266.23 | 4557 | 106.79 |
2015 | 1159.94 | 4929 | 122.11 |
2016 | 1251.17 | 4748 | 109.66 |
2017 | 1258.25 | 4942 | 113.13 |
2018 | 1268.49 | 4906 | 111.45 |
2019 | 1392.60 | 5311 | 110.03 |
2020 | 1769.59 | 6734 | 107.77 |
金価格の変動要因14個
長期の金価格の変動要因は需要と供給
金地金の売買高が世界一であるロンドン金市場。ロンドン金市場ではイングランド銀行の監視下で、顧客の注文に応じて実取引をするマーケットメーカーが売り買いをしています。このときの取引価格が国際的な金価格の指標になります。ロンドン金市場の現物取引は「ロコ・ロンドン」と呼ばれ、米ドルで決済されるために金価格はドル建てです。
日本ではそれに為替レートを元にした円建てで再計算し、純金の輸送費や保険料、製錬費用を加えた価格で取引します。そのため、海外のドル建てと国内の円建てでは金価格の変動率に違いがあります。
ただ、金価格そのものを動かす根本的な要因は需要と供給です。特に長期の金価格は、純金の装飾品や工業製品としての価値で決まります。
純金を装飾品や工業製品として見た場合、需要が供給を上回れば価格は上がり、需要が供給を下回れば価格は下がるでしょう。2017年時点では純金は中国やインドなどの一部の国を除いて、装飾品としての需要が減り続けています。
この結果、金価格が下がるはずですが、代わりにスマホの電子部品のような工業製品としての需要が伸びているため、極端な下落は起きず、むしろ上昇トレンドを維持しています。純金の目的別需要は2017年時点では以下の通りです。
加えて、地上付近の純金を採っていった金鉱山が枯渇してしまい、現在は地下3000m以上を掘らないと、純金が採れません。その結果、供給が不安定になりますし、産出コストが増え続けて、金価格に跳ね返ってきます。
短期の金価格の変動要因は経済指標
長期的には需要が高まり、供給が細る関係で、金価格は上昇しやすいです。ただ、純金の目的別需要は2017年時点で第1位こそ装飾品ですが、第2位は民間投資であり公的機関と合わせると、肉薄しています。
つまり、短期的な金価格の変動は投資マネーの影響が強いです。そのために金価格は投資マネーを動かす、経済、為替、金利、物価、株、有事などが密接に関わってきます。以下は円建て金価格の変動要因です。
要因 | 金価格上昇 | 金価格下降 |
---|---|---|
世界経済 | 不況 | 好況 |
産出国経済 | 不況 | 好況 |
米ドル | 米ドル高 | 米ドル安 |
日本円 | 円安 | 円高 |
政策金利 | 下落・割安 | 上昇・割高 |
物価 | インフレ | デフレ |
株価 | 株安 | 株高 |
原油 | 高い | 安い |
消費税 | アップ | ダウン |
中央銀行 | 購入 | 放出 |
投資家 | マネー流入 | マネー流出 |
生産者 | 戻し | 売り |
有事 | 戦争・テロ | 平和 |
情報取得日 2024年10月時点
基軸通貨である米ドルが安くなると、ドル建て金価格は値上がりします。これは米ドルの価値が下がっても純金の価値は変わらないからです。100ドルで買える純金の量が2gから1.5gに減るなら、実質的な値上がりです。
一方で日本に住む私たちは円建て金価格で売買します。先ほどと同様に米ドルが安くなると、原則は円高になりやすいです。その結果、1万円で買える純金の量が2gから2.5gに増えるため、実質的な値下がりです。
このように為替レートは金価格にダイレクトに影響します。純金が「1g=50ドル」のとき、為替レートが「1ドル=100円」なら5000円を支払いますが、円高で「1ドル=80円」なら4000円で済むわけです。
つまり、米ドル安と円高は円建て金価格を上げる要因であり、逆に米ドル高と円安は円建て金価格を下げる要因になります。
また、世界各国で不況が連鎖したときは金価格が上昇します。通貨や株全体に信用不安が訪れると、単なる紙切れでしかない紙幣より、商品としての価値もある純金への買い換えが増えるためです。
ただし、金価格は複合要因で動くため、単純に米ドル安や不況だから金価格が上昇するとも限りません。
その一方で純金は作物と違って気候変動の影響もなく、すでに地球上にある埋蔵量が知られています。純金そのものの希少性は一定であり、その価値は緩やかな上昇傾向にあることは覚えておきたいです。
金価格が動いた7つの実例
ウクライナとパレスチナ問題で金価格が上昇した
金価格は2011~2013年に上昇が緩やかになりましたが、2014年にロシアとウクライナの軍事衝突、続いてイスラエルとパレスチナの戦争が起きたため、一時的に上振れしました。
いわゆる地政学的リスクです。その結果「製造ラインや物流が止まる、石油が足りずに原油価格が高騰する、心理的不安のために物が売れない」といった現象が起こる可能性が高まりました。
その結果、株価や為替レートが乱高下するため、投資家はリスクを避けて、価値が補償されている純金に資金を流すことで、金価格が上昇するわけです。
ただし、実際には有事では「支払いは米ドルのみ、先払いは認めない、借入金を前倒ししてほしい」などの現金需要が増えることで、手持ちの純金を売り払う人も多いです。そのため今後は一概にも「地政学的リスク=金価格上昇」とは言い切れません。
円安になると国内の金価格は上がる
ロンドンやニューヨークにおける海外の金価格が変わらなくても、円安が進むと国内の金価格は上がります。例えば、2010年9月のドル建て金価格は「1トロイオンス=1271円」であり、円建て金価格は「1g=3473円」でした。その時点の為替レートは「1ドル=83.514円」です。
それが2014年6月のドル建て金価格は「1トロイオンス=1278円」と変動がなくても、円建て金価格は「1g=4239円」に上がりました。その時点の為替レートは「1ドル=101.320円」です。
3年9カ月の間、一時的に激しく上下しながらも、結果的にはドル建て金価格は値がほとんど変動せず、上昇額は実に1トロイオンスあたり7円のみ、上昇率は0.006%に過ぎません。
一方で円建て金価格は幅広いレンジで動きながら、結果的に上昇額は1gあたり766円、上昇率は22.0%に達しました。同時に為替レートは21.3%も上昇していることから、円建て金価格の上昇要因が円安であることがわかります。
インフレで物価が上昇すると金価格も上がる
インフレの進行も円建て金価格を押し上げてくれます。インフレとは物価が上がることを意味しますが、純金も物の1つですので、価格は上がりやすくなります。
ただし、3%程度のほどよいインフレは経済が安定した状態であり、その場合は株価に投資マネーが流れるため、利息や配当が付かない純金からは資産が流出して、金価格が下落するシナリオも考えられます。
金融システムへの不信で純金に資産が流れる
金価格は2011年9月の「1トロイオンス=1896ドル」をピークに下がり、2014年12月には「1トロイオンス=1175ドル」を付けました。これは2008年のリーマンショックの反動と世界経済の回復が要因です。
ただ、2015年にはドル建て金価格は底を打って、上昇に転じた動きを見せました。この理由は世界的な金融システムへの不信と不安です。
まずは米国によるサブプライムローン問題の再燃しました。どのような種類の債権であれ、債権には担保が必要であり、その担保の信用力が債権の格付けに影響します。日本国債であれば日本の経済指標などが頼りになるわけです。
しかし、米国では再びサブプライムローンのような信用度の低い債権が売れています。リーマンショックのときに好景気とされながら奈落の底へ落とされたように、2022年や2023年に同様の現象が起こるかもしれません。
それ以外にも「ギリシャを発端とした欧州経済の悪化、原油価格の下落によるロシアの経済危機、GDPの下落が止まらない中国の景気減速、戦争不可避とされるイスラム国の拡大」というリスクも発生しました。
どれも世界的な金融システムへのインパクトが大きく、当時、改善の兆しは見えませんでした。全リスクに対して「適切に処理できる可能性は低い」と判断されたため、短期的に金価格が上昇しました。
米国の利上げで米ドル高になると金価格は下落する
米国の利上げはドル建て金価格に影響します。米国が利上げをすると、原則的に米ドルに資金が集まって、ドル高円安になります。これで米ドルの価値が高まると、相対的に純金を多く購入できるため、金価格は下がります。
同時に投資マネーは商品や新興国株から引き上げていくために、原油は一段安になりますし、新興国の資金繰りは一層厳しくなるでしょう。そのときは純金も商品であるため、売られる可能性が高いです。
一方ですでに米国の利上げを織り込み済みであるときは別です。例えば、2015年9月や12月に米国が利上げをしても、金価格は一時的に下がるだけで、大きくは影響しませんでした。
株価が上がると金価格は下がる
金価格は不況や有事などのマイナスの事象には強いですが、世界的な好況になると下落しやすい特徴があります。5年間のNYダウ平均とドル建て金価格を比べてみると、相関関係がわかりやすいです。
日付 | NYダウ平均 | ドル建て金価格 |
---|---|---|
2011年1月 | 1万1891ドル | 1358ドル |
2012年1月 | 1万2632ドル | 1656ドル |
2013年1月 | 1万3860ドル | 1671ドル |
2014年1月 | 1万5698ドル | 1243ドル |
2015年1月 | 1万7164ドル | 1250ドル |
例えば、2013年1月から2014年1月にかけて、NYダウ平均が1万3860ドルから1万5698ドルと13%も上がりましたが、ドル建て金価格は1671ドルから1243ドルと26%も下がりました。
この逆相関が起こる原理はシンプルです。常に投資マネーは優秀な投資先を探しています。株価が上がるときは米国株などに資金が流入して、純金からは資金が流出します。株価が下がるときはその逆の現象が起こります。
ただし、必ずしも米国株とドル建て金価格が逆相関になるわけではありません。先ほどのように、NYダウ平均が13%上がったときにドル建て金価格は26%も下がったりして、その値幅にも差があります。
価格が変動するタイミングもよくずれますし、そもそも逆相関しないことも例外的ではありません。特に2008年のリーマンショック以降は逆相関が弱まっています。この理由は投資マネーの行き先と金価格の変動要因が多様化しているためです。
投資マネーの行き先は米国株と純金のみではなく、株、ETF、外国為替、債権、商品先物、REITなどと数十種類もあり、先進国と新興国でもリスクとリターンが異なります。
金価格の変動要因も金鉱山の供給量、生産コスト、中国やインドの需要、世界各国の中央銀行による売買、世界経済、金利、為替、株価、原油、有事などで動きます。有事も金鉱山の周辺かどうかでリスクが異なります。
つまり、基本的には米国株と金価格の動きは逆相関関係が成立しますが、それ以外の要因によって、両方とも大きく価格変動するということです。
年末に下がって年始に上がる
投資全般で年末年始は市場が休場しますが、毎年「年末に価格が下がって、年始に価格が上がる」といった傾向が見られます。例えば、2005~2014年の12月末日と1月初日を株価を比較すると、7勝3敗で上昇しています。
純金も例外ではなく、2005~2014年の12月末日と1月初日の純金1gあたりの円建て金価格を比較すると、2011~2012年を除いて10回中9回も上昇していました。上昇率も平均1.5%と1日の変動幅としてはかなり大きいです。
年 | 12月末日 | 1月初日 | 前日比 |
---|---|---|---|
2005~2006年 | 2052円 | 2131円 | +3.84% |
2006~2007年 | 2542円 | 2552円 | +0.39% |
2007~2008年 | 3198円 | 3226円 | +0.87% |
2008~2009年 | 2620円 | 2728円 | +4.12% |
2009~2010年 | 3446円 | 3471円 | +0.72% |
2010~2011年 | 3901円 | 3931円 | +0.76% |
2011~2012年 | 4202円 | 4179円 | -0.54% |
2012~2013年 | 4826円 | 4962円 | +2.81% |
2013~2014年 | 4330円 | 4396円 | +1.52% |
2014~2015年 | 4976円 | 5003円 | +0.54% |
これは金価格と相関係数が強い金地金や金ETFといった金融商品を、12月の最終営業日に購入して、1月の営業日初日に売却することで、9勝1敗の割合で利益が出るということです。
このように論理的な説明ができなくても一定の法則がある事象を「アノマリー」と呼びます。アノマリーは「変則、例外、異例」という意味です。
ただし、年末年始における金価格の下降と上昇は、ある程度の理由付けがされています。基本的には年末は含み損をロスカットする処分売りがされやすく、年始はご祝儀相場として買いが集まりやすいためです。
この法則が崩れるリスクとしては、株価の場合は年末年始に戦争やテロなどが発生するなどが考えられますが、金価格は有事のときには投資マネーの逃避先として買いが集まるため、株価よりも利確しやすい金融商品です。
今後の金価格は2026年に「1g=2万円」になる
少ない供給と増える需要が金価格を上げる
金投資は短期売買で利益を得る金融商品ではありません。金価格は急落せずにゆっくりと上昇することから、長期保有で利益を狙いつつも、株式投資やFXによる短期売買のリスクヘッジとしての役割が大きいです。
そのため、長期的な金価格の予測が重要になってきます。一般論では純金の需要増と供給減により、長期的な上昇が予測されています。特に純金の需要は中国とインドで高まっています。
純金の年間生産量の過半数は中国とインドが買うほどにもなりました。元々彼らの純金に対する価値観は欧米諸国や日本より高く、重要なプレゼントでは純金を施すことが多いです。
そこに数年間は継続する経済発展と人口増加がやってきました。そのため、先進国の投機筋が純金をいくら売っても、中国の投機筋が「割安」と買い戻してくるため、金価格はなかなか下がりません。
また、2024年10月時点では米国の好景気が継続するとの見込みから、短期的には株に投資したほうが利益が出やすいです。ただし、中国は株や商品にも投資しながらも、金価格が平均より少しでも下がると、純金を買い勢いが増します。
産出コストが上がると金価格に跳ね返る
金鉱山は南アフリカ共和国がシェアの70%を供給していました。ただ、2000年を過ぎてから産出量は落ち続け、現在は10%以下に下がっています。
これは採掘しやすい場所にある純金は採りつくしてしまったためです。現在は3000m以上の深さまで掘らないと、純金が出なくなりました。これでは金価格より採掘コストが高くなり、実質的に純金が採ることはできません。
2017年時点の純金の埋蔵量ランキングはオーストラリア、南アメリカ、ロシア、米国、インドネシアの順ですが、産出量ランキングでは中国、オーストラリア、ロシア、米国、カナダの順になります。
ただし、これらの国でもいずれは同じ問題にぶつかりますし、実際に採掘コストは上がり続けています。このように採掘コストが徐々に上がっていくことで、自然に金価格も上昇するわけです。
例えば「1g=3000円」のときは深さ1kmまでは採掘できました。しかし、それ以上の深さは採算が合わないために、採掘を一時的に制限します。その後、金価格が「1g=4000円」になったときに、今度は深さ3kmまで掘り進むといったことを繰り返しています。
純金の需要は中国とインドが買い支えていますが、供給量は採掘コストの問題で十分ではないため、長期的には金価格が上がる仕組みです。
長期的な円安になると純金の輸入価格が上がる
2013年の金価格は「1g=4962円」でした。しかし、2014年の金価格は「1g=4396円」です。1年間保持しただけで金価格は11.5%も下がり、元本が割れてしまいました。
しかし、2009年は2728円、2010年は3471円、2011年は3931円でした。さらに2019年は4880円です。このように1~2年の短期で捉えると、含み損を抱える時期もありますが、10年の長期で捉えると利益が出やすいです。
特に純金の需要と供給のバランスが明確になった2000年以降では、5年前より価格が下がった年はありません。つまり、5年後には金価格が今よりプラスになっているわけです。
また、国内の円建て金価格は為替レートに左右されやすいです。2012年から始まったアベノミクスによる円安は、輸入品の価格を上げる効果があり、それは純金も例外ではありませんでした。
そのため、今後の為替レートを予測すると「2022~2025年も大きな円安トレンドが続く」と予想されていますので、仮に海外のドル建て金価格が下落しても、円安の影響で国内の円建て金価格は上昇しやすいです。
このように「①中国とインドによる需要の増加、②採掘コストの上昇による供給量の減少、③長期的な円安トレンド」により、国内の円建て金価格は2025年には「1g=9000円」に達すると予測する人もいます。
金価格は急落しないことがメリット
為替は国が危機に瀕すると価値が下がりますし、株は会社が倒産すると価値はゼロです。原油や小麦は消費するとなくなって再利用できませんし、不動産や店舗経営なども空室や災害リスクは付き物です。
しかし、純金は世界各国の誰しもが認める価値があり、どこでもいつでも信頼できる金融資産のため、よく「国籍のない通貨」に例えられます。たとえ世界中の国々が金融危機に陥っても、その価値は下がらずにむしろ上がります。
逆に「世界中が平和で好景気に溢れると、金価値は下がる」というわけでもありません。工業製品としての価値は高まり続けるため、需要がなくならないですし、投資でも個人投資家らはリスク分散として純金の保有を好みます。
ただし、純金には爆発的な需要がない分、急激な値上がりは期待できません。確かに採掘はしにくくなっていますが、まだ在庫は十分にありますので、突発的な供給量の減少も起こらないです。
しかしながら、急激な上昇や下落が発生しないからこそ、ハイリスク・ハイリターンを避けられます。ゆっくりと価格が上がっていく性質は積み立て型の金融商品に最適であり、金投資では純金積立が合っているわけです。
長期的に商品としての存在価値を保持しつつ、短期的に通貨や投資対象にもなる二面性は、純金特有の魅力です。
金投資は長期・積立・分散で続ける
金価格は1991年のバブル崩壊、1999年の歴代最安値を経たあとの動きに注目です。2000年1月時点の「1g=1064円」以降はアップダウンしながらも上昇トレンドが継続中であり、2021年1月時点で「1g=6904円」になりました。
ヘッジファンドや機関投資家らは通常、そのときに伸びる金融資産に集中投資をします。ただ、2008年のリーマンショック後からは世界各国の中央銀行も含めて、長期戦略とリスクヘッジのために好況下でも定期的に純金を買い続けており、結果、金価格を下支えしています。
さらに純金は今後も需要が伸び続けながら、埋蔵量と産出量が徐々に減っていきます。これが金価格が長期的に維持される根拠であり、0.01%未満しかない定期預金の金利より金価格の上昇率に期待する人が増えている要因です。
個人投資家らもリスク分散として純金を持つ意識が高まっています。資産の10~20%を純金に投資する傾向が顕著であり、資産運用では選択と集中ではなく、株、為替、債券、純金などへの分散投資が世界標準となりました。
ただし、金投資は「価格に波があるため、購入時期を分ける」と「価格が高額であるため、少額で購入する」という留意点があります。そのため、一般的にはコツコツと毎月買い続けることができる、純金積立や金ETFが支持されています。