金価格が変動する要因とは?短期的には投資マネーの影響が大きい

中野貴利人
監修中野貴利人
2019/06/28 更新

金価格が変動する要因とは?短期的には投資マネーの影響が大きい

  1. 長期では需要と供給が金価格を動かす
  2. 短期では13の経済指標で金価格が動く
  3. 金価格が動いた7つの実例
  4. 今後の金価格は?2025年に「1g=9,000円」

長期では需要と供給が金価格を動かす

金地金の売買高が世界一であるロンドン金市場。ここの取引価格が国際的な金価格の指標です。ロンドン金市場ではイングランド銀行の監視下で、顧客の注文に応じて実取引をするマーケットメーカーが売り買いをしています。

ここで売買される現物取引を「ロコ・ロンドン」と呼び、米ドルで決済されるためにドル建て金価格になります。日本ではそれに為替レートを元にした円建てで再計算し、純金の輸送費や保険料、製錬費用を加えた価格で取引します。

そのため、海外のドル建てと国内の円建てでは金価格の変動率に違いがあります。ただ、金価格そのものを動かす根本的な要因は需要と供給です。特に長期の金価格は、純金の装飾品や工業製品としての価値で決まります。

純金を装飾品や工業製品として見た場合、需要が供給を上回れば価格は上がり、需要が供給を下回れば価格は下がるわけです。2018年時点では純金は中国やインドなどを除いて、装飾品としての需要は減っています。

この結果、金価格が下がるはずですが、代わりにスマホの電子部品のような工業製品としての需要が伸びているため、極端な下落は起きません。純金の目的別需要は2017年時点では以下の通りです。

さらに地上付近の純金を採っていった金鉱山が枯渇してしまい、現在は地下3,000m以上を掘らないと、純金が採れません。その結果、供給が不安定になりますし、産出コストが増え続けて、それが金価格に跳ね返ってきます。

主人公
主人公
長期では需要が増えて、供給が減るから金価格が上がるのか。
貧乏神
貧乏神
ただし、短期では次の投資マネーが変動要因になるんだぬ。

短期では13の経済指標で金価格が動く

将来的には装飾品や工業製品の需要が高まり、供給が細る関係で、金価格は長期で上昇しやすいです。ただし、純金の目的別需要は2017年時点で第2位が民間投資であり、公的機関と合わせると、第1位の装飾品に肉薄しています。

つまり、短期的な金価格の変動は投資マネーの影響が強いです。そのために金価格は経済、為替、金利、物価、株、有事などが密接に関わってきます。以下は円建て金価格の変動要因です。

要因金価格上昇金価格下降
世界経済不況好況
産出国経済不況好況
米ドル米ドル高米ドル安
日本円円安円高
政策金利下落・割安上昇・割高
物価インフレデフレ
株価株安株高
原油高い安い
消費税アップダウン
中央銀行購入放出
投資家マネー流入マネー流出
生産者戻し売り
有事戦争・テロ平和

情報取得日 2019年1月時点

基軸通貨である米ドルが安くなると、ドル建て金価格は値上がりします。これは米ドルの価値が下がっても純金の価値は変わらないからです。100ドルで買える純金の量が2gから1.5gに減るなら、実質的な値上がりです。

一方で日本に住む私たちは円建て金価格で売買します。先ほどと同様に米ドルが安くなると、原則は円高になりやすいです。その結果、1万円で買える純金の量が2gから2.5gに増えるため、実質的な値下がりです。

このように為替レートは金価格にダイレクトに影響します。純金が「1g=50ドル」のとき、為替レートが「1ドル=100円」なら5,000円を支払いますが、円高で「1ドル=80円」なら4,000円で済むわけです。

つまり、米ドル安と円高は円建て金価格を上げる要因であり、逆に米ドル高と円安は円建て金価格を下げる要因になります。

また、世界各国で不況が連鎖したときは金価格が上昇します。通貨や株全体に信用不安が訪れると、単なる紙切れでしかない紙幣より、商品としての価値もある純金への買い換えが増えるためです。

ただし、金価格は複合要因で動くため、単純に米ドル安や不況だから金価格が上昇するとも限りません。

その一方で純金は作物と違って気候変動の影響もなく、すでに地球上にある埋蔵量が知られています。純金そのものの希少性は一定であり、その価値は緩やかな上昇傾向にあることは覚えておきたいです。

金価格が動いた7つの実例

金価格が動いた7つの実例

1

ウクライナとパレスチナ問題で金価格が上昇した

金価格は2011~2013年に上昇が緩やかになりましたが、2014年にロシアとウクライナの軍事衝突に続き、イスラエルとパレスチナの戦争が起きたため、一時的に上振れしました。

いわゆる地政学的リスクです。その結果「製造ラインや物流が止まる、石油が足りずに原油価格が高騰する、心理的不安のために物が売れない」といった現象が起こりえます。

そのときは株価や為替レートが乱高下するため、投資家はリスクを避けて、価値が補償されている純金に資金を流すことで、金価格が上昇するわけです。

ただし、有事では「支払いは米ドルのみ、先払いは認めない、借入金を前倒ししてほしい」などの現金需要が増えることで、手持ちの純金を売り払う人も多く、一概に「地政学的リスク=金価格上昇」とは言い切れません。

2

円安になると国内の金価格は上がる

ロンドンやニューヨークにおける海外の金価格が変わらなくても、円安が進むと国内の金価格は上がります。

例えば、2010年9月のドル建て金価格は「1トロイオンス=1,271円」であり、円建て金価格は「1g=3,473円」でした。その時点の為替レートは「1ドル=83.514円」です。

しかし、2014年6月のドル建て金価格は「1トロイオンス=1,278円」とあまり変わりませんが、円建て金価格は「1g=4,239円」に上がりました。その時点の為替レートは「1ドル=101.320円」です。

3年9カ月の間、一時的に激しく上下しながらも、結果的にはドル建て金価格は値がほとんど変動せず、上昇額は実に1トロイオンスあたり7円のみ、上昇率は0.006%に過ぎません。

一方で円建て金価格は幅広いレンジで動きながら、結果的に上昇額は1gあたり766円、上昇率は22.0%に達しました。同時に為替レートは21.3%も上昇していることから、円建て金価格の上昇要因が円安であることがわかります。

3

インフレで物価が上昇すると金価格も上がる

インフレの進行も円建て金価格を押し上げてくれます。インフレとは物価が上がることを意味しますが、純金も物の1つですので、価格は上がりやすくなります。

ただし、3%程度のほどよいインフレは経済が安定した状態であり、その場合は株価に投資マネーが流れるため、利息や配当が付かない純金からは資産が流出して、金価格が下落するシナリオも考えられます。

4

金融システムへの不信で純金に資産が流れる

金価格は2011年9月の「1トロイオンス=1,896ドル」をピークに下がり、2014年12月には「1トロイオンス=1,175ドル」を付けました。これは2008年のリーマンショックの反動と世界経済の回復が要因です。

ただ、2015年にはドル建て金価格は底を打って、上昇に転じた動きを見せました。この理由は世界的な金融システムへの不信と不安です。

まずは米国によるサブプライムローン問題の再燃しました。どのような種類の債権であれ、債権には担保が必要であり、その担保の信用力が債権の格付けに影響します。日本国債であれば日本の経済指標などが頼りになるわけです。

しかし、米国では再びサブプライムローンのような信用度の低い債権が売れています。リーマンショックのときに好景気とされながら奈落の底へ落とされたように、2016年や2017年に同様の現象が起こるかもしれません。

それ以外にも「ギリシャを発端とした欧州経済の悪化、原油価格の下落によるロシアの経済危機、GDPの下落が止まらない中国の景気減速、戦争不可避とされるイスラム国の拡大」というリスクも発生しました。

どれも世界的な金融システムへのインパクトが大きく、当時、改善の兆しは見えませんでした。全リスクに対して「適切に処理できる可能性は低い」と判断されたため、短期的に金価格が上昇しました。

5

米国の利上げで米ドル高になると金価格は下落する

米国の利上げはドル建て金価格に影響します。米国が利上げをすると、原則的に米ドルに資金が集まって、ドル高円安になります。これで米ドルの価値が高まると、相対的に純金を多く購入できるため、金価格は下がります。

同時に投資マネーは商品や新興国株から引き上げていくために、原油は一段安になりますし、新興国の資金繰りは一層厳しくなるでしょう。そのときは純金も商品であるため、売られる可能性が高いです。

一方ですでに米国の利上げを織り込み済みであるときは別です。例えば、2015年9月や12月に米国が利上げをしても、金価格は一時的に下がるだけで、大きくは影響しませんでした。

6

株価が上がると金価格は下がる

金価格は不況や有事などのマイナスの事象には強いですが、世界的な好況になると下落しやすい特徴があります。5年間のNYダウ平均とドル建て金価格を比べてみると、相関関係がわかりやすいです。

日付 NYダウ平均 ドル建て金価格
2011年1月 11,891ドル 1,358ドル
2012年1月 12,632ドル 1,656ドル
2013年1月 13,860ドル 1,671ドル
2014年1月 15,698ドル 1,243ドル
2015年1月 17,164ドル 1,250ドル

例えば、2013年1月から2014年1月にかけて、NYダウ平均が13,860ドルから15,698ドルと13%も上がりましたが、ドル建て金価格は1,671ドルから1,243ドルと26%も下がりました。

この逆相関が起こる原理はシンプルです。常に投資マネーは優秀な投資先を探しています。株価が上がるときは米国株などに資金が流入して、純金からは資金が流出します。株価が下がるときはその逆の現象が起こります。

ただし、必ずしも米国株とドル建て金価格が逆相関になるわけではありません。先ほどのように、NYダウ平均が13%上がったときにドル建て金価格は26%も下がったりして、その値幅にも差があります。

価格が変動するタイミングもよくずれますし、そもそも逆相関しないことも例外的ではありません。特に2008年のリーマンショック以降は逆相関が弱まっています。この理由は投資マネーの行き先と金価格の変動要因が多様化しているためです。

投資マネーの行き先は米国株と純金のみではなく、株、ETF、外国為替、債権、商品先物、REITなどと数十種類もあり、先進国と新興国でもリスクとリターンが異なります。

金価格の変動要因も金鉱山の供給量、生産コスト、中国やインドの需要、世界各国の中央銀行による売買、世界経済、金利、為替、株価、原油、有事などで動きます。有事も金鉱山の周辺かどうかでリスクが異なります。

つまり、基本的には米国株と金価格の動きは逆相関関係が成立しますが、それ以外の要因によって、両方とも大きく価格変動するということです。

7

年末に下がって年始に上がる

投資全般で年末年始は市場が休場しますが、毎年「年末に価格が下がって、年始に価格が上がる」といった傾向が見られます。例えば、2005~2014年の12月末日と1月初日を株価を比較すると、7勝3敗で上昇しています。

純金も例外ではなく、2005~2014年の12月末日と1月初日の純金1gあたりの円建て金価格を比較すると、2011~2012年を除いて10回中9回も上昇していました。上昇率も平均1.5%と1日の変動幅としてはかなり大きいです。

12月末日 1月初日 前日比
2005~2006年 2,052円 2,131円 +3.84%
2006~2007年 2,542円 2,552円 +0.39%
2007~2008年 3,198円 3,226円 +0.87%
2008~2009年 2,620円 2,728円 +4.12%
2009~2010年 3,446円 3,471円 +0.72%
2010~2011年 3,901円 3,931円 +0.76%
2011~2012年 4,202円 4,179円 -0.54%
2012~2013年 4,826円 4,962円 +2.81%
2013~2014年 4,330円 4,396円 +1.52%
2014~2015年 4,976円 5,003円 +0.54%

これは金価格と相関係数が強い金地金や金ETFといった金融商品を、12月の最終営業日に購入して、1月の営業日初日に売却することで、9勝1敗の割合で利益が出るということです。

このように論理的な説明ができなくても一定の法則がある事象を「アノマリー」と呼びます。アノマリーは「変則、例外、異例」という意味です。

ただし、年末年始における金価格の下降と上昇は、ある程度の理由付けがされています。基本的には年末は含み損をロスカットする処分売りがされやすく、年始はご祝儀相場として買いが集まりやすいためです。

この法則が崩れるリスクとしては、株価の場合は年末年始に戦争やテロなどが発生するなどが考えられますが、金価格は有事のときには投資マネーの逃避先として買いが集まるため、株価よりも利確しやすい金融商品です。

今後の金価格は?2025年に「1g=9,000円」

今後の金価格は?2025年に「1g=9,000円」

少ない供給量と拡大する需要が金価格を上げる

金投資は短期売買で利益を得る金融商品ではありません。金価格は急落せずにゆっくりと上昇することから、長期保有で利益を狙いつつも、株式投資やFXによる短期売買のリスクヘッジとしての役割が大きいです。

そのため、長期的な金価格の予測が重要になってきます。一般論では純金の需要増と供給減により、長期的な上昇が予測されています。特に純金の需要は中国とインドで高まっています。

2018年時点では純金の年間生産量の過半数は中国とインドが買うほどにもなりました。元々彼らの純金に対する価値観は欧米諸国や日本より高く、重要なプレゼントでは純金を施すことが多いです。

そこに数年間は継続する経済発展と人口増加がやってきました。そのため、先進国の投機筋が純金をいくら売っても、中国の投機筋が「割安」と買い戻してくるため、金価格はなかなか下がりません。

また、2019年1月時点では米国の好景気に伴い、短期的には株に投資したほうが利益が出やすいです。ただし、中国は株や商品にも投資しながらも、金価格が平均より少しでも下がると、純金を買い占める勢いで購入しています。

産出コストが上がると金価格に跳ね返る

金鉱山は南アフリカ共和国がシェアの70%を供給していました。ただ、2000年を過ぎてから産出量は落ち続け、現在は10%以下に下がっています。

これは採掘しやすい場所にある純金は採りつくしてしまったためです。現在は3,000m以上の深さまで掘らないと、純金が出なくなりました。これでは金価格より採掘コストが高くなり、実質的に純金が採ることはできません。

2017年時点の純金の埋蔵量ランキングはオーストラリア、南アメリカ、ロシア、米国、インドネシアの順ですが、産出量ランキングでは中国、オーストラリア、ロシア、米国、カナダの順になります。

ただし、これらの国でもいずれは同じ問題にぶつかりますし、実際に採掘コストは上がり続けています。このように採掘コストが徐々に上がっていくことで、自然に金価格も上昇するわけです。

例えば「1g=3,000円」のときは深さ1kmまでは採掘できました。しかし、それ以上の深さは採算が合わないために、採掘を一時的に制限します。その後、金価格が「1g=4,000円」になったときに、今度は深さ3kmまで掘り進むといったことを繰り返しています。

純金の需要は中国とインドが買い支えていますが、供給量は採掘コストの問題で十分ではないため、長期的には金価格が上がる仕組みです。

長期的な円安になると純金の輸入価格が上がる

2013年の金価格は「1g=4,962円」でした。しかし、2014年の金価格は「1g=4,396円」です。1年間保持しただけで金価格は11.5%も下がり、元本が割れてしまいました。

しかし、2009年は2,728円、2010年は3,471円、2011年は3,931円でした。さらに2019年は4,880円です。このように1~2年の短期で捉えると、含み損を抱える時期もありますが、10年の長期で捉えると利益が出やすいです。

特に純金の需要と供給のバランスが明確になった2000年以降では、5年前より価格が下がった年はありません。つまり、5年後には金価格が今よりプラスになっているわけです。

また、国内の円建て金価格は為替レートに左右されやすいです。2012年から始まったアベノミクスによる円安は、輸入品の価格を上げる効果があり、それは純金も例外ではありませんでした。

そのため、今後の為替レートを予測すると「2021~25年あたりに大きな円安トレンドになる」と予想されていますので、仮に海外のドル建て金価格が下落しても、円安の影響で国内の円建て金価格は上昇しやすいです。

このように「①中国とインドによる需要の増加、②採掘コストの上昇による供給量の減少、③長期的な円安トレンド」により、国内の円建て金価格は2025年には「1g=9,000円」に達すると予測する人もいます。

金価格は上昇より急落しないことがメリット

為替は国が危機に瀕すると価値が下がりますし、株は会社が倒産すると価値はゼロです。原油や小麦は消費するとなくなって再利用できませんし、不動産や店舗経営なども空室や災害リスクは付き物です。

しかし、純金は世界各国の誰しもが認める価値があり、どこでもいつでも信頼できる金融資産のため、よく「国籍のない通貨」に例えられます。たとえ世界中の国々が金融危機に陥っても、その価値は下がらずにむしろ上がります。

逆に「世界中が平和で好景気に溢れると、金価値は下がる」というわけでもありません。工業製品としての価値は高まり続けるため、需要がなくならないですし、投資でも個人投資家らはリスク分散として純金の保有を好みます。

ただし、純金には爆発的な需要がない分、急激な値上がりは期待できません。確かに採掘はしにくくなっていますが、まだ在庫は十分にありますので、突発的な供給量の減少も起こらないです。

しかしながら、急激な上昇や下落が発生しないからこそ、ハイリスク・ハイリターンを避けられます。ゆっくりと価格が上がっていく性質は積み立て型の金融商品に最適であり、金投資では純金積立が合っているわけです。

長期的に商品としての存在価値を保持しつつ、短期的に通貨や投資対象にもなる二面性は、純金特有の魅力です。

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著作・制作など

中野貴利人
監修・執筆・編集
フクポン運営/副業プランナー。新卒で副業開始、26歳で法人化、11期目。副業関連の著書4冊。2児の父。過去の取材や講演はメディア掲載履歴で紹介。