失業保険が貰える人と貰えない人の違いとは?パート・出産・病気・副業・扶養など

- 転職活動をしない人
- パートやバイトで働いていた人
- 結婚・出産・留学・起業をする人
- 病気やケガで働けない人
- 副業やバイトで収入がある人
- 扶養や年金と併用したい人
- 雇用保険の被保険者期間が少ない人
- 解雇や契約解除で離職した人
転職活動をしない人
──転職活動をしなくても失業保険は貰えますか?
失業保険の給付は「就職活動をしていても、職業に就けない状態である」ことが必須条件です。これは雇用保険制度が「失業者=求職活動中の人」のサポートを目的としており、単に「働いていない人」は対象外であるからです。
雇用保険法でも「失業」の定義について、明確に定められています。
被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。
総務省統計局が公表している完全失業者も「仕事がなく、仕事があればすぐ就くことができて、仕事を探す活動をしていた者」を対象にしており、仕事探しをしていない人は失業者には含まれていません。
その一方で雇用保険制度における求職活動には、資格受験や職業訓練も含まれるため、必ずしも履歴書送付や面接といった転職活動をしなければ、失業保険が貰えないというわけではないです。
パートやバイトで働いていた人
──パートタイムでも失業保険は貰えますか?すでに2年以上同じ職場で働いています。
1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上引き続き雇用することが見込まれる場合は、事業主が労働者を雇用保険に加入させる決まりです。
非正規やパートでも、離職日以前の2年間に被保険者期間が12カ月以上ある場合は、正社員などと同じく失業保険の給付対象になります。
結婚・出産・留学・起業をする人
──結婚をすることになり、しばらくは専業主婦をしようと思います。この場合は失業保険は貰えますか?
失業保険は「就職しようとする気持ちと、いつでも就職できる能力があり、積極的に就職活動を行っているのにも関わらず、職業に就くことができない状態」の人にだけに支給されます。
そのため、専業主婦や長期休暇など求職活動をしない以下の人は、失業保険の受給資格者とは認定されません。労働意欲がある人のみが対象となります。
- 結婚後に専業主婦になる
- 妊娠と出産後も働かない
- 学業に専念する
- 海外に留学する
- すでに就職先が決まっている
- すでに働いている
- バイトや日雇いを希望する
- 起業や自営業の準備をしている
- 会社の役員になっている
- 定年後も働く予定がない
- 求職せずに一旦休養する
- 妊娠や出産で働けない
- 病気やケガで働けない
- 親族の介護で働けない
- 定年後に休養してから働く
- 副業の収入がある
- バイトの収入がある
つまり、自分の意志で求職活動をしない場合は、失業保険が貰えません。自分の意志に反して求職活動ができない場合は、失業保険の受給期間を延長できます。また、一部収入がある人は、失業保険から差し引かれます。
──妊娠をしたために会社を退職して、夫の扶養に入ることになりました。出産後はまた別の企業で働きたいのですが、失業保険は貰えますか?
妊娠、出産、3歳未満の乳幼児の育児で、働くことができない期間が30日以上続いたときは、受給期間を延長することができます。通常の受給期間は1年間ですが、最大で1年+3年間となります。
──現在育児休業中です。子供のことを考えて転職しようと悩んでいますが、すぐにはできません。失業手当は給付されますか?
勤務先で雇用保険に入っていれば、休業中でも雇用保険の支払いは行っているので、失業手当の受給資格はあります。ただ、すぐに就職活動ができないのであれば、失業保険は貰えません。
──一旦、社会人から離れて、大学院に通う予定です。
学業に専念する人は、その学業が就職目的としても就職活動をしていないために受給資格はありません。卒業後に就職を考えている人も、すぐに就職活動ができないため、同様に受給資格はありません。
──失業保険を受け取ろうと思っていますが、海外での就職も検討をしています。先んじて就労ビザなどを取得した場合、失業保険の適用は難しいでしょうか?
就職先がハローワークの管轄外、仮に海外であったとしても履歴書の送付や面接などの求職活動の実績があれば、失業保険は給付されます。渡航先での就職活動は国内と特別な違いはなく、その過程で就労ビザが必要になる程度です。
──来月末に帰国予定の海外在住者です。日本を離れる前に失業保険の延長手続きをして、帰国後に失業保険を貰う予定でした。しかし、その期間内にNGOによる海外派遣で2週間ほど日本を離れます。その際は失業保険の延長手続きができますか?
青年海外協力隊などの機関が行う海外技術指導、海外派遣、派遣前訓練や研修であれば、失業保険の給付中でも3年を限度に延長できます。
──起業をして代表取締役に就きました。まだ売上や報酬が0円であるため、失業保険を貰いたいです。
会社の役員に就任した時点で失業保険の対象外です。役員とは「取締役、会計参与、監査役、執行役、理事、監事」を含みます。
──自営業を始めるための準備をしている段階ですが、失業保険は貰えますか?
自営業を始めた人も対象外です。何も売上が上がってなくても、何かしらの事業を始めた時点で受給資格を失います。
病気やケガで働けない人
──病気で入院をしてしまい、結局会社を辞めることになりました。現在も入院中ですが、失業保険の期限はいつまで有効でしょうか?
失業保険の受給期間は原則1年間ですので、就職活動ができない状態が続くと給付期限に達してしまいます。ただし、病気やケガなどですぐに求職活動ができない場合は、給付期間を最大3年間延長できます。
──うつ病で会社を数カ月間、期限未定で休むことになりましたが、現時点まで給料が支払われていません。雇用保険で手当てして貰えますか?
在職中に病気やケガで会社を休んで、その会社から給与が支払われない場合は雇用保険から傷病手当金が支給されます。また、退職した場合は受給期間の延長手続きをすることで、最大3年までを病気の療養に当てることができます。
──退職前6カ月間の給与の合計が失業保険の給付額のベースということですが、病気休業で給与が0円の人はどうなりますか?
無給の場合は支給額も0円になるわけではなく、最低賃金をベースにします。2020年1月時点の下限給付額は1日あたり1984円です。また、自治体によっては病気休業前の金額をベースに計算してくれるケースもあります。
──現在通院中ですが、退職した後でも健康保険は利用できますか?
会社が保険組合を通して、健康保険に加入している場合は、任意継続を選ぶことができます。退職した後も2年間は離職前の会社の健康保険に加入できます。ただし、支払保険料は会社と折半ではなく、全額自己負担です。
副業やバイトで収入がある人
──ブログからの広告収入がある人でも失業保険は貰えますか?
失業保険は貰えます。ただし、収入が多い場合は失業保険が減額されます。失業保険が減額とならない収入金額は「前職の1日あたりの賃金の80%」と「失業保険の日額手当」で計算できます。
前職の1日あたりの賃金の80%
-失業保険の日額手当
+控除額1294円※1
=失業保険が減額とならない収入金額
例えば、離職前6カ月間の給与が180万円、30歳、勤続5年の人は、前職の1日あたりの賃金の80%が8000円、失業保険の日額手当が5915円です。その結果「8000-5915+1294=1日3379円」までの収入なら減額されません。逆に1日3379円を超えた分の収入は日額手当から差し引かれます。
また、この計算式はブログからの広告収入に限らず、ほとんどの副収入に当てはまる内容です。
──会社からの給与以外にマンションを所有しており、賃料が毎月12万円近くが入ってきます。この場合は失業保険を貰えますか?
一般的な会社員と同じく受給資格はあります。ただし、所得が発生している場合はハローワークで申請をして、受給額から収入分を差し引いて計算します。月12万円の副収入の場合は、前職の給与によっては月数万円程度の失業保険が支給される人もいます。
──失業保険の受給中にアルバイトは禁止でしょうか?
失業保険の受給中にアルバイトはできます。ただし、失業保険を受給している間、1カ月に14日以上や1週間に20時間以上の労働をすると、失業中と見なされずに失業保険の対象ではなくなります。
例えば、日給8000円の農作業のアルバイトでも1日10時間労働であれば、2日働くだけで失業保険が一切貰えなくなります。これはあくまで時間単位による制限であって、報酬額の多い少ないは関係ありません。
※1 2020年1月時点
扶養や年金と併用したい人
──失業保険の受給期間中は夫の扶養に入ることはできないでしょうか?
扶養には「配偶者特別控除を受ける」所得税上の意味と「国民健康保険料と国民年金を支払わない」社会保険上の意味があります。失業保険の受給期間中は所得税上の扶養には入れますが、社会保険上の扶養には基本的に入れません。
所得税上の扶養の上限は年収150万円であり、これを超えなければ最大38万円の配偶者特別控除が受けられます。ただ、所得税上は失業保険を年収とみなさないため、失業保険の金額に関係なく所得税上の扶養には入れます。
一方、社会保険上の扶養の上限は年収130万円であり、扶養を計算するときのみ失業保険を収入と見なしています。そのため、失業保険の給付額が年収130万円相当を超えると、国民健康保険料と国民年金は自分負担になります。
この年収130万円相当とは失業保険の日額手当では「130万円÷365日=3561円以上」です。
2020年1月時点では離職前6カ月間の給与総額が80万1450円以上、1カ月あたり13万3575円以上になると日額手当が3561円を超えるため、ほとんどの人が社会保険上の扶養からは外れてしまいます。
──失業保険の受給期間中は年金を貰うことはできないでしょうか?
60~64歳が対象である特別支給の老齢厚生年金は、失業保険と同時に受け取ることはできません。仮に失業保険を申請した場合は特別支給の老齢厚生年金の支給がストップします。
65歳以降が対象である老齢厚生年金場合は、失業保険と同時に受け取ることができます。これは65歳以上の失業保険が高年齢求職者給付金という一時金であり、少額のためです。
雇用保険の被保険者期間が少ない人
──社長より退職するよう促されながら、恒常的に設けられている早期退職優遇制度に応募して離職した場合は、特定受給資格者として認めてもらえるでしょうか?被保険者期間は6カ月という状況です。
早期退職優遇制度に応募した場合は一般受給資格者であり、離職日以前の2年間に被保険者期間が12カ月以上あれば、失業保険は支給されます。
しかし、早期退職が社長からの強要と認められる証拠がある場合は、ハローワークの職員に相談することで特定受給資格者に変更してもらえます。その場合は離職日以前の1年間に被保険者期間が6カ月以上あれば、失業保険は支給されます。
──約半年間の公共職業訓練を受講中で、公共職業訓練の終了月に受給期間が一緒に切れます。しかしながら、いまだに就職できない現状で焦っています。この場合は受給期間の延長の申請を行えば、延長可能でしょうか?
受給期間の延長が認められる理由は「病気やケガ、妊娠や出産、3歳未満の育児、親族の看護、配偶者の海外勤務による同行、公的機関による海外派遣、60歳以上の定年」のみです。
原則「期間内に就職できなかった」だけでは延長は認めていません。そのため、失業保険の期限が切れたあとに生活保護に流れる人も増えています。
解雇や契約解除で離職した人
──3年以上派遣労働者として働きましたが、契約が更新されずに自己都合で退職しました。私は会社都合として失業保険を貰えますか?
有期雇用契約の人で3年以上雇用されていたにもかかわらず、契約が更新されなかったときは、会社都合に該当します。契約の途中で解雇されたり、契約更新せずに雇い止めした人も同様です。
その場合は離職日以前の1年間に被保険者であった期間が6カ月以上あれば、特定受給資格者として扱われます。
──私は派遣労働者ですが、急な解雇通告を受けました。契約期間中の解雇は違反ではないでしょうか?
中途解雇する派遣元企業には30日前までに本人に通告、もしくは1カ月分の賃金を手当として支払う義務があります。いずれかのケースにも該当しない場合は違反ですので、労働基準監督署に相談しましょう。
また、失業保険では会社都合にあたり、特定受給資格者として扱われます。