【漫画】第29話「戦争や地震で円高になる理由!2008年以降は「有事=円高」の傾向」
「ミサイルが発射された!」
「円高の理由は買い戻し」
「有事で円高になった例」
「戦争が起きたら即円高」
2008年以降は「有事=円高」になる
有事で日本円が買われる現象は、過去から未来にわたって保証された法則ではありません。ただ、2008年のリーマンショック以降から現在まで、戦争やテロ、地震や自然災害、金融危機が起こるたびに円高になっています。
2008年のリーマンショックでは米ドル/円が20%以上も円高でした。2011年の東日本大震災では米ドル/円が約8%も急騰します。2015年にフランスなどの主要都市でテロが起きても、米ドル/円は1%は円高に動きました。
近年のわかりやすい例では2016年です。2016年1月は「1ドル=120円」で始まりましたが、中国経済の悪化から118、117、116円と円高に流れます。ワールドクラスの経済危機が訪れると、日本円への買いが集まる結果です。
その後、日銀によるマイナス金利の発表で1日3円も円安にぶれましたが、すぐに円高に戻しました。2016年2月は欧州経済の悪化と世界的な原油安でさらに円高が加速してしまい、半年で120円から106円まで動きます。
2016年6月のイギリスのEU離脱が決定したときは、99円台に突入しました。このように中国経済の悪化、欧州経済の悪化、イギリスのEU離脱というリスクが発生するたびに、日本円は売られてきたわけです。
有事で日本円が買われる理由
有事で日本円が買われる理由は、日本国と日本円の信用力が高いからではありません。確かに日本は年間500兆円のGDP、年間20兆円の経常黒字、350兆円の対外資産高があります。
しかし、それ以上に日本は超低金利が続き、日本円の投資対象としての価値が低いことが原因です。例えば、2024年10月時点では日本円の金利が-0.1%であり、カナダドルの金利が1.75%でした。
平時では投資家は高金利のカナダドルを持ったほうが利益が得られるため、日本円を売り続けて、カナダドルを買う取引が進みます。
その後、有事が発生すると不安心理が高まって、投資家は「日本円でカナダドルを買ってきたけれど、カナダドルを売って日本円に戻そう」と手仕舞いに切り替えます。企業や個人も海外にある資金を日本国に還流します。
つまり「有事=円高」とは日本円が安全で買われるのではなく、日本円が買い戻される現象です。決して日本円が特別に人気なわけではありません。
また、超低金利以外にも有事になる原因は2つあります。まずはデフレです。日本のように長期でデフレが続く国の通貨はいずれは上昇しやすいため、有事ではとりあえず保持することが妥当です。
次に海外資産です。日本企業や個人は海外資産を大量に持っており、有事では手元に現金を持つほうが安心と考えたり、損失額の穴埋めとして、海外資産を売却して日本円が買われる傾向があります。
北朝鮮リスクでは日本円と金が買われた
2017年2~7月に北朝鮮はミサイルを1、4、3、3、1、2回と連発しました。そのたびに1円程度の円高が進みます。8月にはグアムへのミサイル発射を準備したり、実際に日本の領空を通過するミサイルも発射しました。
その際は軍事衝突の高まりから「1ドル=115円」は110円まで進行し、9月には広島原爆の10倍以上である水爆実験を行ったことで、107円へ動きました。世界規模で投資を控える動きとなり、リスクオフにシフトします。
ただし、すべての金融商品が売られるわけではありません。基本的には「何かが売られる=何かが買われる」と仕組みです。例えば、FXでは米ドルや豪ドルが売られて、日本円やユーロが買われました。
株式では米国株や日本株が売られて、上海株や新興国株は買われています。例外的に潜水艦や対戦車誘導弾を製造する川崎重工業、機雷を生産する石川製作所、イージス艦受注の実績があるIHIなどの防衛関連株は買われます。
あとは金価格が上昇を続けます。実物資産である純金は1番の安全資産であり、有事のときは最も上昇率が高い金融商品です。また、仮想通貨であるビットコインやビットコイン関連株も資産の逃避先として上昇します。