PERとは割安な株を見つける指標!低位株で好業績の銘柄を買おう

トヨタとホンダはどちらがお得か?
株では基本的に「これから値上がりするであろう」と予測できる銘柄に投資するため、割安なうちに買いたいです。ただ、仮にトヨタの株価が3000円だったとしても、その株価が割安かどうかはわかりません。
そこでPERが役立ちます。PER(Price Earnings Ratio)とは株価収益率のことです。株価を1株あたりの純利益で割った数値であり、それを業界平均との差を比較することで、割安度がわかります。
PER=株価÷1株あたりの純利益
例えば、トヨタの株価が3000円で、1株あたりの純利益が300円だったとき、トヨタのPERは10倍となります。一方、ホンダの株価が6000円で、1株あたりの純利益が300円だったとき、ホンダのPERは20倍となります。
トヨタのPER=3000÷300円=10倍
ホンダのPER=6000÷300円=20倍
トヨタとホンダは1株あたりの純利益が同じ300円であるにも関わらず、トヨタの株価はホンダの半分である3000円しかないため、トヨタの株価は「割安に買える」と判断できるわけです。
このように「PERが低い=割安」を意味するため、PERの低い銘柄のみを売買対象とする投資家も大勢いますし、日本経済新聞やYahoo!ファイナンスなどでも、PERの低い銘柄をランキング形式で閲覧できます。


PERとは投資金額を回収できる年数
PERは株価収益率であり、計算式は「株価÷1株あたりの利益」です。これを言い換えると「買ったときの株価を利益何年分で回収できるかを表す」とも説明できます。
例えば、株価が3000円で、1株あたりの利益が1000円だったときは、PERが3倍となり、3年で回収できます。この年数が小さいほど回収にかかる期間が短くなるために、優秀な企業と判断できるわけです。
また、PERは少し大きなスケールで考えるときにも役立ちます。株価に発行済みの株式数をかけると「時価総額」、1株あたりの利益に発行済みの株式数をかけると「純利益」が算出できます。
時価総額=株価×発行済みの株式数
純利益=1株あたりの利益×発行済みの株式数
そのため、時価総額を純利益で割ってもPERが算出できます。例えば、高島屋の時価総額が4000億円で、予想純利益が200億円だった場合、PERは20倍となりました。
PER=時価総額÷純利益
これは4000億円を元手にして、毎年200億円の純利益を出す会社ということです。仮にこの企業を時価総額の4000億円で買収した場合、20年後に投資金額を全額回収できることがわかります。
このようにPERは業績や株価を同じ業界内の企業と相対的に比較できる指標です。PERを使いこなせるようになれば、株式投資で稼げるというわけではありませんが、PERを軸にして、株で収入を得ている人は多くいます。
低いPERで株価上昇中の銘柄が買い
PERは「株価÷1株あたりの利益」であることから、株価が上昇中の銘柄はPERも高くなりがちです。逆に株価が下降中の銘柄はPERが低くなります。
株価1000円÷1株あたりの利益100円=PER10倍
株価2000円÷1株あたりの利益100円=PER20倍
株価3000円÷1株あたりの利益100円=PER30倍
そのため、業界を絞って、PERが低い銘柄だけを見つけても、株価が下がったり、停滞し続けるだけで、上昇しないかもしれません。そこで私たちは株価上昇中でも低PERを維持している企業を見つける必要があります。
株価が上昇して、PERが上がっても、さらに業績アップで1株あたりの利益も上昇すると、PERが再び下がります。つまり「利益に株価が追いつかない低PER株」を探すわけです。
株価2000円÷1株あたりの利益100円=PER20倍
株価2000円÷1株あたりの利益200円=PER10倍
株価2000円÷1株あたりの利益400円=PER5倍
利益に株価が追いつかない低PER株の探し方はシンプルです。最初に「低PER ランキング」や「PER 低い株」などと検索すると、PERの低い銘柄をランキング形式で紹介しているサイトがいくつも見つかります。
そこで低PER株をピックアップして、過去2~3年の業績がしっかり伸びているかを確認します。株価が上昇中であれば「買い」であり、株価が下落中であれば「売り」と判断できます。
- スマホやパソコンで「低PER ランキング」と検索します。
- 低PER株をランキング形式で紹介しているサイトを見つけます。
- 低PER株をピックアップして、過去2~3年の業績を確認します。
- 株価が上昇中であれば「買い」と判断できます。
例えば、2015年7月時点ではフィデアホールディングスのPERが4.63倍とかなり低いですが、株価は2013年1月に198円、2014年1月に200円、2015年1月に220円と伸びています。数カ月後に株価が上がる保証はありませんが、上昇余力を残していると判断できます。


実績PERと予想PERの違い
PERには「実績PER=最新の純利益から算出したPER」と「予想PER=将来の純利益から予想したPER」の2つがあります。例えば、東芝の指標データでは36.43倍という実績PERと17.05倍という予想PERが掲載されています。
指標 | 実績 | 予想 |
---|---|---|
売上高(百万) | 6,502,543 | 6,700,000 |
経常利益(百万) | 180,938 | 250,000 |
純利益(百万) | 50,826 | 120,000 |
1株あたりの純利益 | 12.00 | 28.34 |
PER | 36.43倍 | 17.05倍 |
PBR | 1.12倍 | - |
ROE | 4.50% | - |
ROA | 2.90% | - |
1株あたりの純資産 | 290.25 | - |
自己資本比率 | 19.70% | - |
情報取得日 2015年7月28日
そこで実績PERと予想PERのどちらを参考にすべきかは、専門家でも意見が割れていますし、証券会社もPERを表示するときに実績PERと予想PERのどちらを採用しているかは各社で異なっています。
実績PER派は「株価は簡単には先が見通せないために、過去の実績で判断していく」と考えています。予想PER派は「株価とは将来を業績が重要であるために、将来の予測で判断していく」と捉えているわけです。
ただし、過去の業績データや株価の推移を重視する場合も、結局は今後の成長戦略などを元に算出した業績予想は外せません。
確かに業績予想は上方修正や下方修正がよく行われて、変動しやすい指標ではありますが、過去の指標よりも未来の指標が株価を決めるため、実際には予想PERを参考にする人のほうが多いです。
注意点は業種で平均値に差があること
ヤフーのPERが24倍、みずほ銀行のPERが12倍だったとき、PERが低いみずほ銀行のほうが割安と判断することは、一概にもできません。それはPERの平均値が業種ごとに大きくずれているためです。
例えば、ITやスマホなどの情報・通信業は、企業業績が1年で2倍以上になったり、利益が稼ぎやすいことから、投資家の期待値がわりと高いです。利益が出ていなくても期待先行で株が買われることが多くなります。
その結果、株価は高く、1株あたりの利益は低くなるため、情報・通信業のPERは大きくなりがちです。全業種における標準的なPERは2017年12月時点で21~22倍ですが、情報・通信業の平均PERは26.1倍に達しています。
逆にメガバンクは極端な赤字や倒産も起こりにくいですが、急激に利益が増えることがないため、投資家の期待値は低いです。その結果、銀行業の平均PERは2017年12月時点で12.1倍に抑えられています。
つまり、PER24倍のヤフーは情報・通信業、PER12倍のみずほ銀行は銀行業であり、業界がまったく異なるために株価や利益の動きもかなり違います。その結果「株価÷1株あたりの利益」で計算するPERでは比較ができません。
PERを使うときはまずは業界を絞ります。PERは同じ業界内で比較するときに役立つ指標です。例えば、パナソニックは日本マクドナルドホールディングとではなく、ソニーや日立製作所と比較します。ちなみに業界別の平均PERは次の通りです。
業種 | 単純PER | 加重PER |
---|---|---|
水産・農林業 | 16.1 | 15.9 |
鉱業 | - | 64.2 |
建設業 | 12.6 | 14.1 |
食料品 | 24.7 | 24.7 |
繊維製品 | 27.5 | 19.0 |
パルプ・紙 | 18.5 | 18.3 |
化学 | 20.6 | 21.3 |
医薬品 | 25.9 | 29.5 |
石油・石炭製品 | 10.4 | 13.3 |
ゴム製品 | 16.7 | 17.6 |
ガラス・土石製品 | 21.4 | 24.5 |
鉄鋼 | 19.2 | 23.0 |
非鉄金属 | 17.0 | 22.7 |
金属製品 | 14.5 | 21.6 |
機械 | 24.6 | 26.1 |
電気機器 | 30.5 | 32.0 |
輸送用機器 | 24.3 | 14.2 |
精密機器 | 27.4 | 29.5 |
その他製品 | 25.0 | 31.5 |
電気・ガス業 | 15.7 | 11.6 |
陸運業 | 16.6 | 16.5 |
海運業 | - | - |
空運業 | 18.5 | 12.3 |
倉庫・運輸関連業 | 53.9 | 35.4 |
情報・通信業 | 26.1 | 14.9 |
卸売業 | 18.4 | 14.0 |
小売業 | 28.7 | 30.2 |
銀行業 | 12.1 | 11.8 |
証券、商品先物取引業 | 18.2 | 12.9 |
保険業 | 15.5 | 13.3 |
その他金融業 | 13.0 | 14.9 |
不動産業 | 14.1 | 17.1 |
サービス業 | 28.8 | 43.1 |
この表にある単純PERとは単純に全企業のPERを平均化した数値です。加重PERとは時価総額ベースで全企業に重みを付けてから平均化しています。
そのため、単純PERではNTTやJTなどの時価総額が大きい企業の影響を受けにくいため、時価総額が小さい企業のPERを見るときに適しています。逆に加重PERでは時価総額が大きい企業の影響を受けやすいため、時価総額の大きい企業のPERを見るときに適しています。