おっさんレンタルの現場に潜入!副業で年間レンタル300件の秘訣とは?

中野貴利人
著書「副業アイデア事典」など5冊/メディア掲載実績は日経新聞など150回以上/株式会社ネットピコ代表
2024/08/18 更新本ページはプロモーションを含みます

おっさんレンタルの現場に潜入!副業で年間レンタル300件の秘訣とは?

数ある副業の中でも相当な変わり種と言えるのが、「おっさんレンタル」です。おっさんレンタルのサイトにプロフィールを登録し、それを見たユーザーにレンタルしてもらい、食事をしたり悩みを聞いたりする仕事です。ここ数年メディアでもよく取り上げられ、認知度がかなり上がりました。

今回は、おっさんレンタル業で年間300件という驚異のレンタル数をこなした「表参道ノハゲ」ことイケダシトムさんをフィーチャー。貴重な「レンタル現場への潜入」をとっかかりに、おっさんレンタル業の実態やメリット、デメリットを紹介します。

素の自分をどれだけ売り出せるか試せる
プロ
副業
2018/06/27
イケダシトムさん
47歳 男性 長野県
おっさんレンタル歴3年

月5~6件のおっさんレンタル業務をこなす。時給5000円で1カ月の報酬はおおよそ8万円。本業は北欧家具の輸入代理業やオンライン販売業など、複数の会社を経営。

  1. 月平均25件のレンタル注文を受ける
  2. 潜入!おっさんレンタルの生現場
  3. デート・相談・イベントもこなす
  4. おっさんレンタルのメリットと注意点
  5. おっさんレンタルで成功する秘訣

月平均25件のレンタル注文を受ける

北欧家具の輸入代理業やオンライン販売業など、いくつかの会社を経営しながら、副業で「おっさんレンタル」を行うイケダシトムさん。1970年生まれの現在47歳(2018年6月時点)です。

おっさんレンタルのイケダシトムさん

創業者・西本氏に感銘を受けて連絡

イケダシトムさんがおっさんレンタルの存在を知ったのは、2015年のことでした。おっさんレンタルの創業者である西本貴信さんのことをメディアで知り、「なんておもしろい人なんだろう」と感銘を受けます。すぐさま西本さんにメールを送ると、「今日会えませんか」と返信が。これが始まりでした。

「おっさんレンタルに興味を持ったのは、お金が目的ではなく、純粋に面白そうという好奇心でした。僕は結婚経験があり、もうすぐ成人する息子もいますが、現在は離婚して一人暮らしです。また会社経営という仕事がら、自由に使える時間がそれなりにありました」

おっさんレンタル公式サイト

おっさんレンタル公式サイトに登録するには、年間13万円の登録料が必要です。対してレンタル報酬は時給1000円が基本。イケダさんは早速登録をし、2015年7月よりレンタルおっさん業を開始します。

「ハゲ」を打ち出したら依頼が殺到

ところがはじめの1カ月ほどは、レンタル依頼がたった2件しかきませんでした。これはまずいと思ったイケダさんは、策を講じます。おっさんレンタルのサイトとは別に、新たに自分専用のサイトを立ち上げたのです。

「自分ははげていて、表参道にオフィスがあったので、西本さんに『表参道ノハゲ』というレンタルおっさんネームをつけてもらいました。サイトでは、そのキャラクターを前面に打ち出し、自虐ネタも盛り込みました。『nohage.jp』という独自ドメインも取得しました」

表参道ノハゲのおっさんレンタルサイト

以降、レンタル数は急増し、2015年末にレンタル通算100件を達成。さらに1年後の2016年12月には通算400件を達成、2017年3月にはついに500件を達成します。年間300件ペースなので、月平均25件のレンタルをこなす計算です。イケダさんの場合、1件あたりのレンタル時間は3.3時間といういことなので、1カ月のレンタル報酬はおおよそ8万円になります。

独立後のレンタル報酬は時給5000円

その後イケダさんは2017年6月に、おっさんレンタル本部から独立し、個人でおっさんレンタル業を開始します。以降も変わらず多くのレンタル依頼を受けますが、2017年末頃より本業の関係で出張機会が増え、レンタルに充てる時間を圧縮せざるを得なくなり、現在は月に5~6件ほどのレンタル業務を行っています。

「以前ほど多くのご依頼を受けることが難しいのと、キャンセル時のリスクも大きくなったので、現在は時給5000円でレンタルしていただいています」

独立を果たし、さらに時給は5000円に。おっさんレンタルの「ネクストステージ」に進んだと言えるイケダさんですが、果たしてその人気はどこからくるのでしょう?気になる「レンタル現場」に潜入させてもらいました!

潜入!おっさんレンタルの生現場

5月某日。東京での仕事に合わせてレンタル案件を1件受注したイケダさんは、待ち合わせ場所である銀座のシャンパンバー前に19時50分ごろ到着。待ち合わせ時間は20時。依頼者は30代の看護師さんだと言います。どんな人がくるのでしょうか?

20時ジャストに依頼者のAさんが到着。若くてきれいな女性です。

依頼者のAさんが到着する

イケダさんはこれまでAさんのレンタルを何度も受けていて、すっかり打ち解けた様子です。

イケダ
イケダ
久しぶりですね。いつぶりでしたっけ?
Aさん
Aさん
たぶん、半年ぶりくらいですね
イケダ
イケダ
もっと会わなかったように感じるなー

店の前で話す

早速シャンパンバーに入店。お店はAさんが予約しました。店内はシックで洗練された趣です。通されたのは、奥のボックス席。Aさんは7000円ほどするシャンパンボトルをオーダーします。

イケダ
イケダ
カンパーイ
Aさん
Aさん
カンパーイ

乾杯する

話題は近況報告に始まり、Aさんの元カレの話や、イケダさんの現在の仕事や住環境の話、そしてAさんの現在のカレの話などなど。イケダさんは、どちらかというと聞き役に徹している印象です。

近況を報告する

聞き役に徹する

その後もAさんの恋愛話を中心に、こんこんと話は続いていきます。互いに緊張感は感じられず、かといってリラックスしきっている感じでもなく、自然体でいいムードです。恋人同士のようにも見えます。互いにいいペースでシャンパンを飲んでいきます。

シャンパンを飲む

入店して1時間近く経ったころ。

Aさん
Aさん
まあ最近は、プライベートでは平穏ですね
イケダ
イケダ
プライベートでは、ということは‥‥
Aさん
Aさん
‥‥。実は、仕事でちょっと悩んでいることがあって‥‥

悩みを話す

以降はAさんが抱える仕事の悩みについての話となりました。ちょっとした言葉の切れ端から、Aさんにとって「話しにくいけど話したい」といった類の悩み話を引き出したイケダさんの会話力は、さすがだなと感じさせるものがありました。

耳を傾ける

的確な意見を伝える

その後も悩めるAさんの深い話が続き、イケダさんはじっと耳を傾けつつも、要所要所で的確な意見を伝えます。そしてその話も一段落した頃、時刻は22時近くになっていました。

Aさん
Aさん
じゃあ、もう1件行きましょうか
イケダ
イケダ
そうしましょう

店員を呼び、Aさんが会計を済ませます。レンタル中の飲食代は、基本的に依頼者が支払うことになっています。

その後、2人は銀座の別のバーに移動。2件目はレンタル扱いではなく、普通に友人としての飲みとなりました。こちらではお酒の力も手伝ってか、よりざっくばらんな会話が展開されました。イケダさんの口も滑らかで、面白おかしいエピソードもいろいろ飛び出しました。

そして24時過ぎ、会はお開きとなり、Aさんはタクシーで帰っていきました。

この日のレンタル案件を振り返ると、とにかくイケダさんの「自然体さ」が印象的でした。相手の話を聞くのも、自分の意見を言うのも、無理をしている感じが全くありませんでした。思ったことはきちんと言うし、会話の沈黙を無理に埋めることもしない。でも場の雰囲気は終始和やか。これぞ年間300件のレンタルをこなした者がたどりつける境地なのでしょうか。

デート・相談・イベントもこなす

今回潜入したような飲み案件意外にも、池田さんが受けるおっさんレンタルの内容は多岐にわたります。過去の案件を5つ紹介してもらいました。

チェック1

ワンコと一緒にデート

ワンコと一緒にデートする

依頼主は20代の女性で、依頼内容は「犬の散歩に付き合って欲しい」というもの。依頼主が飼うフレンチブルドッグとともに公園で遊び、その後はワンコと一緒に豪勢な食事を楽しみました。もはや、ただのデート!?

チェック2

IT企業の定例会に出席

定例会に出席する

某IT企業が開催する定例納会にレンタルされ、バーカウンターのバーテンダーを務めました。イケダさんの他にも何人かの「キャスト」が呼ばれていたとのこと。イケダさんは好評で、この会に定期的に呼ばれるようになります。

チェック3

天津の単独ライブにゲスト出演

ライブにゲスト出演する

よしもと芸人にしておっさんレンタル業も手がける天津・木村氏からレンタルされ、天津の単独ライブ中の「おっさんレンタルコーナー」にゲスト出演。同じくおっさんレンタルで人気を博す「隅田川の河童」氏と共に、おっさんレンタルにまつわる面白トークを披露しました。

チェック4

即日で7時間レンタル

7時間レンタルされる

おっさんレンタルには、今日すぐ会いたい人用の「クイックおっさん」というシステムがあります。50代女性からクイックおっさん依頼が入り、偶然スケジュールが空いていたため受注。話に花が咲き、結局お酒を飲みながら述べ7時間もレンタルされました。

チェック5

男性から仕事の相談を受ける

仕事の相談を受ける

40代男性からレンタルされ、ビジネスについての相談を受けます。依頼者は過去に何度かイケダさんをレンタルしたことがあるリピーター。男性依頼者からはセルフブランディングやセルフプロデュースに関する相談が多いといいます。

依頼主の9割以上が女性である

このようにイケダさんのレンタル案件は、性別も年代も目的もさまざまです。ただ、割合的には女性が圧倒的に多く、実に9割以上にのぼるとか。なぜ女性からの需要がそれほど高いのでしょう?

「時代的に心が疲れている人が多いのか、ギラギラしていなくて少しくたびれたようなおっさんが、いま女性から意外なほどニーズが高いんです。きっと『一緒にいてラク』とか『癒やし』みたいなものを求めているんでしょうね」

それだけ女性からの依頼が多いと。現場で「間違い」は起こらないのでしょうか?

「そこはご想像にお任せしますが、僕は基本的にはおっさんレンタルをきちんと仕事と捉えて、どうしたら依頼者のお役に立てるかというのを最優先に考えています」

おっさんレンタルのメリットと注意点

対人スキルが大きくアップする

こうした多彩な案件に日々対応するおっさんレンタルという仕事。イケダさんに、そのメリットとデメリットを挙げてもらいました。

イケダさんがおっさんレンタルを始めて特によかったと感じているのが、「対人スキル」が上がったことだと言います。

「当然ですが、依頼者は一人ひとり目的が違います。悩みを聞いて欲しい人もいれば、ただ話がしたいだけの人、楽しませてもらいたい人、暇をつぶしたい人もいる。そういう人たちと1カ月に25人も会い、それぞれにきちんと真正面から向き合っていれば、もはや毎日が修行みたいなもので、コミュニケーション能力が上がらざるを得ません。空手の百人組手みたいなものかもしれません。次はどんなヤツがくるんだと(笑)。

おかげでなんでも柔軟に対応できるようになったというか、少々のことでは動じなくなりました。以前の自分は完璧主義で不寛容なところがありましたが、今はなんでも許容できるようになった気がします。

あとはたくさん人に会いすぎて、会った瞬間に相手がどんな人か、おおよそわかるようになりました。もはや最近はメールやLINEでもだいたいわかります(笑)」

そういった能力は仕事の商談や取引先とのやり取りでも生きてくるため、おっさんレンタルを始めて以降は、本業の方もいい流れになっていると言います。依頼者と意気投合し、それがビジネスに繋がることもあるそうです。

ビジネスに繋がる

他にもこんなメリットがあると言います。

「例えば、じっくり就職活動の相談に乗ってあげた学生から『就職が決まりました!』と喜びの連絡がきたり、恋愛相談でアドバイスした子から『新しいカレができて今すごく幸せです』と言われたりすると、やっぱり素直にうれしいですね。依頼者の人生に少しでも自分が役に立てたんだなと」

さらにはこんな「裏メリット」も。

「これは僕の話ではありませんが、浮気の『保険』におっさんレンタルを使う人もいるようです。おっさんレンタルをしていれば、浮気相手と一緒のところを人に見られても、『あれはおっさんレンタルだったんだよ』と言えるからです」

噛み合わない人と一緒にいるのがつらい

逆におっさんレンタルのデメリットは、性格が合わない人と一緒にいるのがつらいことに尽きると言います。

「自分と合うか合わないかは、実際に会ってみないと分かりません。時には全く噛み合わない人もいます。そういう人と何時間も一緒にいるのはかなりつらいですし、消耗しますね。特に負のエネルギーを持っている人と長時間いると、こちらまでズドーンと落ちてしまいます」

おっさんレンタルで成功する秘訣

自分ならではのキャラを打ち出す

最後に、イケダさんのようにおっさんレンタルで成功するための秘訣を教えてもらいました。

何よりも大切なのが、「キャラをしっかりと打ち出すこと」だとイケダさんは言います。

「オーダーが入るか入らないかは、どれだけ自分のキャラを打ち出せるかで決まってくると思います。今やおっさんレンタルの登録者は70人近くもいるので、独自性がないとそれこそ埋もれてしまいます」

イケダさんにとっては、「ハゲ」こそがキャラや独自性にあたるものだったと言います。

素の自分をそのままさらけ出す

自分をさらけ出す

また、キャラの打ち出しにも近いですが、「自分をさらけ出すこと」も大きなカギになると言います。

「かっこつけたり盛ったりせず、自分のありのままの姿をさらけ出すことが大事だと思います。最近の女性は、変にかっこつけた男より、かっこ悪いことを気にせずさらしているような男の方をかっこいいと思うようです。また自分の性格やおっさんレンタルをやる目的などを包み隠さずプロフィールで伝えることで、自然と自分に合った依頼者がやってくるようになるので、ミスマッチも大きく減らせます」

とはいえ、サイト上に自分をバーンとさらけ出すのは、なかなか勇気がいることです。

「確かに僕も最初は躊躇しました。西本さんに自分の写真とプロフィール送る際は、メールの送信ボタンをなかなかクリックできませんでした(笑)。でも思い切ってその一線を越えてみたら、『自分に本当に必要だったのは、こうやってさらけ出すことだったんだ』というのがよくわかりました。おっさんレンタルが背中を押してくれ、人生が大きく前に進んだ気がします」

お金以外の自分ならではの目的を持つ

さらにイケダさんは、おっさんレンタルで「何を目的にするか」も重要になってくると言います。

「おっさんレンタルの報酬は時給1000円がベースなので、お金を目的にするとなかなか厳しいものがあります。だからこそお金とは別の、自分ならではの目的を持つことが大切です。僕の場合はそれが、素の自分にどれくらい価値があるかを知ることであり、いろいろな人に接して知らない世界を見ることでした」

イケダさんのように、お金以外に何らかの目的をきちんと見いだせる人であれば、おっさんレンタルはやってみる価値の十分ある副業かもしれません。

ウーマンレンタル

また、イケダさんは現在、おっさんレンタルの女性版「ウーマンレンタル」の運営も手がけています。

取材・文 / 田嶋章博

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