海外の副業事情!欧米はクラウドソーシング・ギグワーク・アルバイトが人気

欧米の副業者の割合は米国が4.9%、イギリスが3.9%、ドイツが6.9%、フランスが5.4%※1でした。日本は4%※2であり、先進国では全労働者の5%前後が副業をしています。
※1 労働政策研究・研修機構(2018年4月)「諸外国における副業・兼業の実態調査」
※2 総務省(2017年10月)「就業構造基本調査」
米国の副業事情
米国の副業者の割合は4.9%です。副業先進国である米国では、仕事の掛け持ちに法的規制はなく、労働時間の上限も定められていません。社会的にも原則自由であり、一部の企業のみが就業規則で制限しているに留まります。
副業する人の割合が多い本業の職種は、男性が「消防士、健康診断・開業医、歯科衛生士、心理学者、監督予防官、中等学校教師、言語病理学者」、女性が「歯科衛生士、心理学者、健康診断・開業医、音楽家・歌手」※3の順です。
教師、消防士、警察官は日本では公務員法で副業禁止と定められていますが、むしろ積極的に第2の仕事に従事しています。
例えば、教師はクラブ活動や課外授業、夜間学校などの支援をしている人が多いです。それ以外でも転売ビジネス、絵本作家、代行業、ドッグシッター、ヨガインストラクターなどもいました。
また、1980~2000年代に生まれた世代の29%※4は、ギグワークをしているという全米経済研究所の調査もあります。
ギグワークの例としては、ブロガーや自主出版などのメディア運営、転売、デザイナーやプログラマなどのクリエイティブ系、UberEatsの配達員やUberドライバーと多岐にわたり、フォトグラファー、ライター、コンサルタント、保育代行、バーテンダーなどが人気です。


ただ、ギグワークには問題点もあります。ギグとは単発や日雇いの仕事であるため、自由な稼ぎ方ができる反面、不安定な収入と地位が続きます。
さらにプラットフォームや依頼主との単価交渉もできないため、突然に不利な条件を突きつけられては、それでも案件を請け負う、もしくは仕事を辞めるリスクが潜んでいます。


※3 Husain(2014年)
※4 全米経済研究所 Katz and Krueger(2016年9月)「The Rise and Nature Alternative Work Arrangements in the United States」
イギリスの副業事情
イギリスの副業者の割合は3.9%です。副業を含めて週に原則48時間以上の労働はしてはいけないため、別の企業に雇用されるタイプの副業は難しいです。また、就業規則で副業を禁止している企業もあります。
人気の副業は「教育業、小売業、保険業、飲食サービス業、スポーツ・娯楽・レクリエーション業」※5です。
その他では「行政・防衛・社会保障、建物・景観サービス業、クリエイティブ・芸術・芸能業、介護業、居住型介護業、農林漁業専門職、熟練工、プラント・機械操作・組立工」などもランクインしています。
イギリス人男性の本業の平均賃金(1週間)は、非副業者が419英ポンド、副業者が441英ポンドでした。本業で稼いでいる人のほうが副業をしていることがわかります。
これは比較的賃金の高い教員、医師、クリエイターといった専門職の男性が本業に近い副業をしているためです。
イギリス人女性の本業の平均賃金(1週間)は、非副業者が324英ポンド、副業者は295英ポンドでした。男性とは逆で本業の給与が低い女性が、副業にて販売員、飲食店従業員、清掃員といった非熟練職を選ぶ傾向があるためです。


警察官を限定にした調査によると、警察官の6~8%が副業をしていることもわかっています。日本では警察官は公務員にあたるため、副業が禁止されていますが、イギリスの警察官はフォトグラファー、修理作業員、タクシードライバーなどの副業をしています。


※5 イギリス国家統計局(2017年12月)「2 digit Industry and 3 digit occupation in Second Job, showing employed and self-employed for J16J17」
ドイツ・フランスの副業事情
ドイツの副業者の割合は6.9%です。副業を含めて1日10時間以上、6カ月平均で1日8時間以上を超えた労働は原則禁止です。
しかし、ドイツでは月収450ユーロ以下の仕事を「ミニジョブ」、月収451~850ユーロの仕事を「ミディジョブ」という枠組みがあり、副業をする人の90%以上※6はミニジョブを選んでいます。この理由はミニジョブは社会保険料が免除される制度であるためです。
ドイルにおける社会保険料の被保険者負担率は、2017年時点で健康保険料7.3%、介護保険料1.275%、年金保険料9.35%、雇用保険料1.5%と高めです。一方、ミニジョブではこれらの社会保険料が0%になるため、雇用主側の折半する負担がなくなりますし、従業員側も給与から天引きされなくて済みます。
さらに副業しても足がつきにくいため、副業ではミニジョブで月収450ユーロ以下を稼ぐ人が自然と増えていきます。また、副業者は女性のほうが多く、副業の職種は専門職よりパートタイム、副業の目的は主に収入補填です。


フランスの副業者の割合は5.4%です。副業者の性別は女性が80%以上であり、年齢は40歳以上が74%、職種は飲食や小売などの第3次産業が93%※7を占めています。


※6 ドイツ労働市場・職業研究所(2017年)「Immer mehr Menschen haben einen Nebenjob」
※7 フランス厚生労働省(2014年)「Les pluriactifs : quels sont leurs profils et leurs durées de travail ?」
中国・韓国の副業事情
リクルートワークス研究所の2008年の「中国・人と組織の実態調査」によると、上海ホワイトカラーの就業者の26.4%は現在の勤務先以外からも収入を得ていました。
人気の副業トップ10は「株式投資・基金・債券、不動産投資、別会社勤務、店舗経営、ネットショップ・ネットオークション、ウェブサイト制作、通訳・翻訳、経理代行、コンサルティング、フリージャーナリスト」※8です。
副業をする理由は「収入を増やすためが60.7%、生活の安定のためが15.1%、趣味や特技を生かすためが15%、将来の独立・開業のためが8.9%、その他が0.4%」でした。


韓国では長時間労働の抑制が進んでおり、1週間に12時間までしか残業できません。しかも割増賃金率が150%と多いため、残業する企業が少なくなりました。
同時に最低賃金を2017年に16.4%、2018年に10.9%と急激に引き上げたため、コンビニなどの時給が上がり、副業でパートタイムをする人が増えています。


※8 リクルートワークス研究所(2008年)「中国・人と組織の実態調査」
東南アジアの副業事情
東南アジアでも副業は一般的です。例えば、UpWorkやfiverrといった海外のクラウドソーシングサービスにて、デザイナー、動画制作、プログラマー、ライターなどのクリエイティブ系の案件を受注することも一般的です。案件の報酬額が欧米のレートであるため、日本人の感覚よりも高単価な案件が揃っています。
フィリピンでは199jobsなどの現地のクラウドソーシングがよく使われていることもあります。


ベトナムでは副業が労働者の権利として広がっており、副業をする文化があります。タイやマレーシアでもそうですが、日本より「副業が当たり前である」の感覚があり、転売ビジネス、翻訳、ツアーガイド、独立開業など、自らのスキルを高めながら、キャリアアップに副業を活用する人が目立ちます。

