【漫画】第46話「公務員ができる副業7選!地域貢献・投資・講演・執筆・農業など」
「公務員法で懲戒処分」
「地域貢献や投資はOK」
「家業手伝いも大丈夫」
「全部やっているよ!」
国家公務員法と地方公務員法では、原則として副業を禁止しています。ただし、自治体によっては「地位貢献や社会課題に取り組む事業は、任命権者の許可があれば可能」といった制度が広がり始めており、地域の人手不足を解決する一助となっています。
公務員ができる副業7選
法律で禁止されている公務員の副業ですが、すべて原則であり、要所で例外が見つかります。例えば「駐車台数が10台以上が自営に当たる」とされているため、10台未満なら自営業に該当しないといったケースです。
さらに国家公務員法第3条にて「公務の公正性や信頼性に悪影響がなく、申請があったときは承認する」と定めています。つまり、次の7つの副業に関しては副業に該当しなかったり、申請書を出すと認可されるということです。
地域貢献活動
消防団、土木全般や雪下ろし、子供の教育活動やサッカー指導員などは公益性があり、特定団体の利益供与に当たらないため、常識的な範囲内であれば謝礼や報酬を受け取っても構いません。
非営利団体であるNPOのような社会性や公共性が高い活動も認可されやすいです。NPOには保険・医療・福祉の増進、まちづくりや観光の推進、災害救援、国際協力、科学技術の振興などがあり、活動費が受け取れます。
ただし、地方公務員の場合は市区町村によって内部規定が異なります。奈良県生駒市や兵庫県神戸市のように有償ボランティアを推進している自治体でも、基本的にすべての地域貢献活動において許可が必要です。
不動産投資
公務員による不動産投資は小規模であれば、副業に該当しません。小規模とは「年収500万円未満」が基準であり、さらに「戸建てなら5棟未満」などの物件数が関連します。
- 賃貸による収入は年500万円未満
- 独立家屋(戸建て)は5棟未満
- 独立的に区画された部屋(マンション)は5棟10室未満
- 土地は10件未満
- 駐車場は10台未満
- 太陽光発電は10kW未満
例えば、太陽光発電で売電する行為は公務員に限らず、一般的です。自宅の屋根に設置した太陽光パネルで自家発電して、概算では「発電量-自宅で使用した電気量=余った電気量」が収益となります。
売電単価は毎年更新されており、発電量が10kW未満は2018年度が1kWあたり28円でした。これであれば、年収も500万円に達しませんし、発電量が10kW未満であるため、副業には該当せず、許可を取る必要もありません。
これは小規模な不動産投資が「体力的や精神的負担になる労働が発生せずに職務がおろそかにならない、利害関係が発生しない、収益も想定できる」ため、副業ではなく副収入という位置付けだからです。
一方で大規模物件、もしくは映画館、劇場、ゴルフ練習場などの遊戯施設、旅館やホテルなどの業務が発生する施設を賃貸経営する場合は、自営型の兼業に該当するため、自営兼業許可申請書の提出とその許可が必要です。
申請時には「不動産の登記簿謄本、賃貸料収入額がわかる書面、管理会社に業務委託する契約書」なども添付します。自治体によっては職務への影響を入念に確認するために、提出から許可まで1年以上かかることもあります。
株式投資・FX
株式投資やFXなどの資産運用は、副業ではなく投資であるために認められています。収入金額に上限はなく、スマホで気軽にできて、定年後も続けられることは魅力的です。ただし、元本保証ではなく損するリスクもあります。
資産運用では「株式投資、IPO、FX、投資信託、先物取引、純金積立、仮想通貨、CFD、ソーシャルレンディング、クラウドファンディング、ワイン投資、定期預金、個人向け国債」などは許可を得る必要がないです。
一方で戸建てやマンションなどの大規模な不動産賃貸、民泊やカーシェアなどのシェアビジネス、フランチャイズ店やキッチンカーなどの店舗経営は資産運用のスケールではなく、事業であるために投資とは認められません。
講演・講師
勤務時間外に講演、助言、意見で謝礼を得る行為も、国家公務員法第103~104と地方公務員法第38条にある「報酬を得る事務に従事してはならない」に触れるために禁止されています。
ただし、専門性の高い研究や地域貢献できる分野であれば、許可を得ることで実施できます。その際も特定の人物や団体と利害関係がなく、公務に悪影響が出ないことが前提条件です。
執筆活動
執筆活動には前例が多々あります。公立高校で国語教師をしていた俵万智氏は文筆活動に励み、1986年に角川短歌賞を受賞しました。1987年に「サラダ記念日」がベストセラー、1989年まで教職は続けながらの執筆活動です。
通商産業省に入省した堺屋太一氏は、1975年に在職中でありながら「油断!」で小説家デビューをしています。1976年には「団塊の世代」を発表するなど、1978年に退官するまで帰宅後や土日祝日を使っての成果です。
公務員は職務外で報酬を得る行為そのものが原則禁止ですが、趣味の範囲や表現の自由が尊重されるため、電子書籍の制作、同人誌や創作活動も含めて、執筆活動は認められやすいです。
ただし「対外的に信用が損なわれない、情報漏えいなど懸念されない、公務員としての職務に支障がない、公務員の品位を損なわない」など、記述には注意が必要です。
小規模農業
人事院の「義務違反防止ハンドブック」にも記載されていますが、農業が営利目的でなく、農地や売上が小規模な場合は、自営や副業に該当しないため、副業の申請書は不要です。
それ以外の農業、牧畜、酪農、果樹栽培、養鶏などは自営とみなされ、原則禁止です。ただし、相続などで家業を継ぐ場合は、その規模にもよりますが、上長の承認を得られることがあります。
農業では「耕地面積が30a未満、農産物の年間販売額が50万円未満」の自給的農家と「耕作面積が30a以上、または農産物の年間販売額が50万円以上」の販売農家に区分されます。
自給的農家は小規模で副業が認められやすいです。販売農家も公務員の年収を上回らない程度の利益であれば、地域貢献や地域振興という名目でも副業が認められる場合があります。
特に地方では実家が農家である公務員も多く、家業を引き継ぐニーズは高まっています。また、農業も「公正で信頼ある姿勢を失わない、民間企業などとの利害関係が発生しない、業務に支障がない」ことが前提です。
家業手伝い
農業や寺院など無償でサポートする行為は、報酬が発生しない限りは兼業に該当しません。ただし、土日に限るなど、公務員としての日常業務に支障をきたさないことが条件です。
公務員が副業で懲戒処分になった実例
公務員の副業がばれてしまった場合は懲戒処分を受けます。懲戒とは「不当行為に対して懲らしめて戒める」制度であり、罪の重さによって「訓告、戒告、減給、定職、免職」の5段階に分かれます。
種類 | 説明 |
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訓告 | 上司に注意されるのみで、厳密には懲戒処分ではありません。ただ、部署異動などの短期の制裁例もあります。 |
戒告 | 職員の人事記録に残り、退職まで不利な影響が続きます。昇給や賞与査定、出世においても粛清対象です。 |
減給 | 給与の数十%を最大6カ月間減額します。一時的でそこまで多くない副収入のときに適用されます。 |
停職 | 最大6カ月間職務に従事できず、その間の給与は0円になります。副業で長期間や多額の収益を得た人が対象です。 |
免職 | 公務員としての身分を失います。副業で免職例はなく、副業中に犯罪行為をしたときに適用されます。 |
実際に懲戒処分を受けた公務員の例は多々あり、毎年30~50人の規模で摘発されています。公務員の副業がばれる原因は主に「総務部から納税額の増加を指摘、税務署から無申告を指摘、第三者による密告」です。
懲戒 | 対象 | 内容 |
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訓告 | 2015年 大分市 10代女性 |
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戒告 | 2010年 大阪府立病院 30代男性 |
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減給90% 1カ月 | 2008年 福岡消防局 40代男性 |
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減給90% 3カ月 | 2016年 佐賀広域消防局 40代男性 |
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減給90% 6カ月 | 2008年 市川市 40代男性 |
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停職3カ月 | 2013年 大阪市 40代男性 |
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停職4カ月 | 2014年 福岡市 |
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停職6カ月 | 2013年 宝塚市 50代男性 |
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停職6カ月 | 2014年 大阪市 50代男性 |
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停職6カ月 | 2015年 さいたま市 50代男性 |
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免職 | 2012年 徳島県警 40代男性 |
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免職 | 2014年 陸上自衛隊 20代男性 |
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公務員を副業禁止とする12の法律
定年まで安定した給与が貰える公務員は人気の職業の1つです。マイナビウーマンの2017年4月の「結婚したい男性の職業は?」によると、未婚女性の回答は第1位が「公務員」で28.3%でした。
ただし、公務員は国民全体に奉仕する仕事であるため、一般企業よりも制約が多いことはデメリットです。その1つが副業禁止の規定であり、これは就業規則ではなく、国家公務員法と地方公務員法に明記されています。
報酬を得る行為を禁ずる
以下はわかりにくい文面ですが、要約すると「営利企業や営利団体の役員、顧問、監督、従業員になることは禁止、自営業や個人事業を含めて報酬を得る行為を禁止」ということです。つまり、副業全般が禁止されています。
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
公務員は国民のために働く
公務員は「国民のために働く、公共のために働く、全力で集中して働く」と法律で定めています。逆に捉えると、私利私欲のために利益を得る行為は禁止していることになり、副業もこれに該当します。
すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
信用・守秘・専念がベース
国家公務員法と地方公務員ともに「信用を確保する義務、秘密を保持する義務、職務に専念する義務」があることを述べています。つまり、副業ではこのすべてに違反するリスクが高いことから、厳しく禁止しています。
職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
名義貸しはばれて処分されることに注意
公務員による自営兼業承認申請書は却下されることもありますし、人気の副業であるクラウドソーシングや転売などは、公務員ができる副業の対象外です。そのため「ばれないように副業したい」ニーズは少なくありません。
そこで一部の公務員は本人ではなく、夫や妻などの配偶者名義、もしくは親や親戚名義で副業をしています。ただし、これには3つの重大なリスクが潜んでいます。
1つめは「税金や社会保険を納める」ことです。配偶者の年収が93万円以上で住民税の納付義務、103万円以上で所得税の納付義務、130万円で社会保険料の加入義務が発生してしまい、収入が増えても手取り額が減ります。
2つめは「どこからか情報が漏れる」ことです。配偶者名義でも「本人が副業の当事者である」とばれたときは、隠蔽と見なされて重い懲戒処分が課されます。公務員への社会的制裁は退職時まで尾を引き、生涯年収が減ります。
3つめは「税務調査で問題が起こる」ことです。税務調査が入ったときに配偶者が適切に応対できないと、事実上の所得者は本人と指摘されます。その場合は追徴課税となり、それが役所にも伝わる可能性があります。
本来、所得の名義変更は法律違反であるため、まったく推奨できません。その副業で収入を得たい人は、休日に配偶者の仕事を手伝うというスタイルにすることで、合法的な副業として許可されやすいです。
公務員の副業でよくある質問
──趣味のブログに広告を載せることは違法ですか?
ブロガーとして活躍することは問題ありませんが、ブログに広告を載せると継続的な収益が発生するために、副業に該当します。ただし、自営兼業承認申請書を提出することで認められるケースも多いです。
ちなみに民間では実名登録によるブログやSNSの利用を禁止している企業も少なくありませんが、公務員は「信用確保、秘密保持、職務専念」の自覚と責任が取れる限り、私的利用は制限していません。
──不用品をメルカリで売ってお小遣い稼ぎをしています。最近はセールで商品を安値で仕入れて、メルカリで高値で売れるようになってきました。
不用品をメルカリやヤフオク!などに出品して、売却する行為は労働や事業ではないために公務員もできます。ただし、在庫を仕入れて転売した場合は事業所得や雑所得になり、全般的にNGです。
──ポイントサイトをしたり、アンケートモニターでお小遣い稼ぎをしています。
ポイントを貯める行為は日常生活の一部であり、副業には該当しません。ただし、アンケートモニターや商品モニターといった謝礼(現金に換算できるポイント)が目的である場合は問題視されます。
──公的に認められている公務員の副業はありますか?
公務員は「採用試験の監督、選挙員会の手伝い、統計調査員」などで追加収入を得ることができます。ただ、それらは休日出勤や残業に近く、自らの意思で稼ぐ副業とは違って、副業という認識はありません。
──公務員が副業を始めるときに何か書類を申請しますか?
国家公務員の場合は「所轄庁の長の申出により人事院の承認を得る」ことになっており、次の自営兼業承認申請書を提出して、承認されることで副業ができます。
地方公務員の場合は「任命権者の許可を受ける」ことで副業が認められるため、地方公務員は自治体で異なりますが、基本的には国家公務員の自営兼業承認申請書をベースにした申請書が存在します。
自営兼業承認申請書には「事業内容、収入の予定年額、職員に必要とされる従事時間」など、さらに「利害関係の有無」や「職務遂行への支障の有無」なども記入します。また、それらを証明する必要書類も揃えます。
申請書は直属の上司が受理を判断して、その行政機関のトップが許可します。そのため、ほとんどの裁量権は上司にあります。
ただし、副業で問題や事故が起きたときは上司にも監督責任が追求されることから、あまり前向きな回答が期待できないかもしれません。そのため、副業を申請する前にあらかじめ上司に相談しておくことも必要です。