【漫画】第19話「副業のリスクは?就業規則や法律違反など7つのデメリットに注意」
「副業はリスクあり!」
「賠償請求や逮捕も!」
「まずは就業規則を!」
「えっ!?副業できない」
副業に潜む7つのリスク
就業規則に違反する
副業には本業、プライベート、法律において、7つのリスクが潜んでいます。その中で本業の会社にある就業規則は、1番に確認すべき事項です。仮に就業規則に副業禁止とあり、本業に支障が出たときは懲戒処分の対象になります。
筆者の勤務先では就業規則にて副業が原則禁止されていました。それでも上司に「副業を続けたい」と相談したところ、部長会議にかけられます。結果的に本業に支障が出ていないために「その副業は黙認する」となりましたが、1歩間違えると一時的な減給や長期的な評価に影響してきます。
同僚に副業がばれる
副業は本業に影響が出ることもあって否定的な人も多く、お金が絡むために嫉妬や反感を生み、ときには無駄な争いに発展します。本業の会社が副業を推進する方針ではないときは、原則副業を同僚に話すことはやめましょう。
筆者の場合も社内で副業がばれたときは「そろそろ辞めるらしい、今度おごって、月100万円も稼いでいる」などと情報が1人歩きしました。本業中に疲れた顔を見せたら「副業のせい」と思われるリスクもあります。
本業に集中できない
副業を重視するあまり、本業で集中力が欠けたり、本業へのやる気を失う、本業の仕事を軽視する人も出てきます。始めから本業と副業を両立できる人は限られており、事前準備としての時間管理や体調管理が欠かせません。
生活リズムが崩れる
副業で楽しく稼げるほど、副業に時間をかけることになるため、睡眠不足になったり、体と心が疲れていきます。眠気、肌荒れ、吐き気が慢性化したり、イライラや不安を感じたら、一旦副業をストップしましょう。
また、政府と民間が副業推進に舵を切っても、2024年10月時点では副業における労働契約や勤怠管理などの労務では法整備が完璧ではありません。そのため、本人がプライベートで始めた副業は、自己管理と自己責任が問われます。
公務員法に抵触する
公務員は「信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念の義務」によって、原則副業ができません。公務員法に抵触する人は毎年出てきますが、たとえ戒告や減給処分だったとしても、その悪い評価は定年退職まで残ります。
法的リスクが増す
物品やサービスを売る独立型の副業をする人もいます。その際は著作権法、商標法、特定商取引法、景品表示法、消費者契約法、古物営業法、個人情報保護法などに注意が必要です。
犯罪行為で捕まる
金儲けに目がくらむと、転売してはいけない商品を売ったり、人を騙してお金を稼ごうとするなど、普段はしない犯罪行為に手を染める人がいます。法的リスクを重ねたことで逮捕されると、本業ともに生活の基盤を失います。
副業禁止の就業規則は1番リスクあり
副業禁止は法律上は無効である
就業規則で「副業禁止」に言及していても、法律上は副業そのものを禁止することはできません。就業規則で有効な部分は「副業が原因で本業に悪影響があったときの懲戒処分の内容」までです。
憲法では「職業選択の自由」が認められており、本業以外の仕事をすることには個人に裁量があります。法律上も国家公務員法と地方公務員法で副業を禁じている以外に、副業に言及する箇所はありません。
つまり、本業の会社における労働契約や業務命令の1つとして副業禁止を定めても、憲法のほうが上位であるため、会社は副業を認めざるを得えないです。
逆説的には「法的な拘束力が働かないからこそ、多くの会社が就業規則で副業を禁止している」とも言えますが、就業規則とは「就業時間内のルール」であり、就業時間外のプライベートに干渉するほどの影響力は持ちません。
過去の裁判例でも「副業によって本業の業務に支障が出た、本業の会社に損失を招いた、本業に多大なリスクが生じた」以外は、副業による懲戒処分は無効という判決が出ています。
モデル就業規則でも副業は認めている
厚生労働省が制定したモデル就業規則では、労働者の遵守事項(第11条)に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と明記されています。
各企業もこの1文に準ずることで、社会的に「副業=禁止」の認識が広がりました。就業規則に反して副業をした違反者は懲戒処分となり、従業員もそれを受け入れる流れが一般的ではあります。
しかし、2018年1月にモデル就業規則が改定されて、この1文が削除されました。本来より就業規則に副業を禁ずる法的拘束力はありませんが、これで社会的にも雇用者に遠慮することなく、副業ができるようになりました。
さらに最新のモデル就業規則には「第14章 副業・兼業」の項目が新たに追加されています。そこでは「副業する際は届け出が必要なこと」や「会社が副業を禁止できる例」などを定めています。その内容は次のとおりです。
- 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
- 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
- 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
- 労務提供上の支障がある場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により、企業の利益を害する場合
それでも就業規則は原則遵守する
一般論としては「就業規則に副業禁止とあり、副業が原因で本業に何らかの悪影響が出たとき、もしくは出るリスクが高いときは懲戒処分とされるが、基本的に副業そのものは問題ない」との認識で構いません。
しかし、いくら社会的に副業を認めていても、本業の会社が副業を好ましく思わない以上、あなたの行為が評価や査定を下げるかもしれません。そのため、就業規則で副業が認められていても、ビジネスパーソンがリスクなく自由に副業できるわけではありません。
特にモデル就業規則にあるような「本業の業務に支障が出た、本業の企業機密を漏洩した、本業の企業の信用を損ねた、本業の企業の利益を害した」場合は、就業規則に違反したことで懲戒処分の対象になるため、就業規則は一旦遵守します。
その上で会社や上司と「副業解禁」に向けて、建設的な話し合いをすることが必要です。副業には企業と社員の双方にメリットがあるため、それをアピールすることで就業規則を変える流れを模索しましょう。
副業で会社と裁判沙汰になった10例
副業による疲労に対して「本業の業務に悪影響を及ぼしている」ことを数値で証明することは難しいです。同じく「本業の企業ブランドが失墜した」も不明瞭であり、結局は裁判で争うことになります。
実際にあった副業に関する判例は次のとおりです。職業や業務内容によって判決は異なり、同じ副業でも解雇の有効と無効に分かれたり、会社に損害賠償請求できた事件もありました。
判例 | 内容 |
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マンナ運輸事件 2012年 |
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東京都私立大学教授事件 2008年 |
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ジャムコ立川工場事件 2005年 |
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十和田運輸事件 2001年 |
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協立物産事件 1999年 |
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ナショナルシューズ事件 1990年 |
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都タクシー事件 1984年 |
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小川建設事件 1982年 |
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古河鉱業事件 1980年 |
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橋元運輸事件 1972年 |
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副業のリスクで起こった事件7選
マンガで紹介した7つのリスクの中でも「公務員法に抵触する、法的リスクが増す、犯罪行為で捕まる」は罪が重いです。特にせどりやオークションなどでは次のような犯罪行為が実際に発生しています。
鳥取県の会社員は会社の倉庫にあったシュレッダーやタイムレコーダーなどを転売。さらに社内の業務マニュアルをネットオークションに出品したことがバレて、窃盗罪で逮捕される。
東京都の会社員は中国で仕入れた制服にソフトバンクのロゴマークを貼って、販売員の衣装としてネットオークションに出品。5年間は発覚せず、被害額が1000万円を超えたことで、商標法違反の疑いで逮捕される。
香川県の会社員はライブチケットを転売して、1000万円以上の売り上げをあげる。ただし、転売に必要な古物営業の許可を取っておらず、転売した金額も大きいことから古物営業法違反で逮捕される。
埼玉県の会社員は絶滅危惧種を繁殖させて、1匹1万~4万円で熱帯魚ショップに転売。これだけでも文化財保護法違反だが、さらに天然採取や産地直送をうたった虚偽行為が発覚したことで、不正防止法違反の疑いで逮捕される。
三重県の会社員はバイク1台を盗んでネットオークションに出品し、30万円で落札。しかし、引き渡し場所に現れた落札者はバイクを盗まれた被害者であり、同行した警察に窃盗罪で逮捕される。
福岡県の会社員はブリーダーの副業をしていたが、飼育やしつけに時間がかかってしまい、結局は小型犬に衰弱死。警察への情報提供により、動物愛護法違反の疑いで書類送検される。
東京都の会社員が限定販売された寝台列車の指定席券を6万円で転売。しかし、東京都では転売目的の券やチケットの購入を迷惑防止条例で禁止しており、同様の余罪も多数あったことで逮捕される。
お小遣い稼ぎに始めた副業でも「著作権法、商標法、特定商取引法、景品表示法、消費者契約法、古物営業法、個人情報保護法」に知らずに違反していることがあります。さらに損得勘定が先行すると「窃盗罪、文化財保護法、動物愛護法」などにより、刑事罰の対象になりえます。
罪にならないホワイトと勘違いしたり、グレーゾーンを踏み越える、もしくは欲が勝ってブラックな犯罪に手を染めるなど、認識は人それぞれですが、警察が動くほどの犯罪行為では本業の会社から懲戒解雇されることもあります。
副業で起こる労基法・労災・過労死のリスク
労働基準法
労働基準法では本業のA社で8時間、副業のB社で3時間労働したとき、B社が3時間分の残業代を支給しなくてはいけません。つまり、副業を請け負う企業は常に割り増しされた人件費を支払うことになり、副業者の雇用に消極的でした。
ただし、2020年9月に副業・兼業の促進に関するガイドラインが改定されて、企業が労働者に副業かどうかを確認するのではなく、労働者が企業に副業であることを申告することが基本であると記載されています。
労基法第38条第1項の規定による労働時間の通算は、自らの事業場における労働時間と労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間とを通算することによって行う。
そのため、実態としては「企業が副業だから割増賃金を支払う」や「労働者が副業だから割増賃金を求める」ことは一般的ではなく、お互いに暗黙の了解で雇用関係を続けている事例が目立ちます。
労災保険
企業は労働者の本業や副業にかかわらず、労働者に対して労災保険の加入手続きを行う必要があるため、本業のA社と副業のB社ともに労災保険が適用されます。
ただ、A社の労災保険が適用される範囲は、自宅からA社までの通勤経路とA社に勤務中の時間のみです。A社からB社までの移動中、B社に勤務中、B社から自宅までの帰宅経路は、B社の管轄でB社の労災保険が適用されます。
そのため、仮にB社の勤務中の事故で労災保険が認められても、B社は副業のために給与が低く、B社の労災保険では満足できる金額が貰えないかもしれません。また、A社には関係ないため、A社で働けない期間が発生してもA社の労災保険の対象外となり、大幅な年収ダウンが懸念されます。
うつ病・過労死
働きすぎはうつ病と過労死の原因になりえます。本業1本であれば、本業のA社が業務量と労働時間をコントロールして、うつ病や過労死を防ぐでしょう。
しかし、本業と副業による合計業務量と合計労働時間は、自分でコントロールしないといけません。パラレルワーカーの体調不良やストレスの責任範囲は法解釈が難しく、仮に過労死が起きても労災が100%給付される保障はありません。